ビジネス心理学をご存知だろうか。よく知られているものに、アサーティブ、フレーミング、バーナム効果、コールドリーディングなどがある。相手の妥協を引きずり出す「ちゃぶ台返し」なども該当する。
神岡真司氏はビジネス心理学の専門家である。ビジネス心理学に関する著書も多く、30万部ベストセラー『ヤバい心理学』がある。今回は近著『効きすぎて中毒になる最強の心理学』(すばる舎)を紹介したい。
フィア·アピール(Fear·Appeal)で黙らせる
抽象的な言い方で黙らせるフィア·アピール(Fear·Appeal)という手法がある。次はある会社における上司と部下の会話である。上司の言うことに、ことごとく反抗する部下がいると、上司はムカつくものだ。
<いま社内でありがちな会話>
上司T「役員会からのお達しで、残業は19時までと決まった。19時には全館で強制的に消灯するそうだから、そのつもりでやってくれ。最近は組合や労基署がうるさいそうだ」
部下A「またお得意のやつですか。19時で消灯なんてやってられませんよ!」
部下B「結局、家に持ち帰る風呂敷残業か、早朝出社ってことですよね?」
部下C「組合はなんて言ってます。法律に違反しているなんてとんでもないっすよ!」
上司T「そのあたりは大人の事情ってやつだ。ワーク·ライフ·バランスで頼むよ」
部下A「つーか、ワーク·ライフ·アンバランスですね。なに考えているのか(笑)」
部下B「ん、離職率がさらに高まりますね。そのうち社員いなくなりますね(笑)」
部下C「ハァ?これっていま流行のブラック企業ってやつですよね(笑)」
上司「僕を困らせないでくれ。これは決定事項なんだ。よろしく頼む!!」
中間管理職は上司からは抑えつけられ、部下からは突き上げをくらうからストレス加重も大きく大変な職務だ。いつも部下から反抗されて閉口しているにちがいない。
こうした状況を放置しているとますます部下は反抗的になっていく。適度に刺さないと、やさぐれて、さらに反抗的な態度に走らないとも限らない。こんな捨て台詞を聞かされて、黙って我慢していたのでは他のメンバーにもしめしがつかない。
つぎの一言が効く
このような場合、神岡氏によるとつぎのような言葉が効くらしい。
「きみ、そのうち居場所なくなるよ!」
「きみ、自分の将来を考えたことがないのか?」
言葉尻をとらえればきりがないが、ときにはこのような抽象的なひと言が効くようだ。「お前、クビになるぞ」は解雇権濫用のリスクがあり反発を招き問題にもなりかねない。
部下の言い分はある意味正しい。しかし組織の論理にはそぐわない。このような場合は、上手く丸め込むことが重要だ。そのうえで、組織の論理を理解させなくてはいけない。
なお、本書に取上げられたケースはリアリティがあることから日頃のビジネスにも転用可能だ。楽しみながらビジネス心理学を理解できることだろう。
尾藤克之
コラムニスト
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