韓国のコンテンツ・インキュベーション

韓国文化大陸観光省に属するコンテンツ振興院KOCCA。そこが運営するインキュベーション施設CEL(Creative Economy Leader)を訪問し、デジタル特区CiPとの連携策を協議しました。
 
KOCCAはコンテンツの人材育成機関CKL(Contents Korea Lab)もソウルで運営しており、CELはそこから派生した起業支援組織。韓国政府がコンテンツの育成にかける意気込みに日本は遠く及びません。
CKLは過去2度訪れていまして、これまでレポートしてきました。
「Content Korea Lab訪問記」
「拡張するコンテンツコリアラボに刺激を受けました。」
 
CELはソウル中心部に17階のビルを構え、未来創造科学省とも連携して起業サポートしています。昨年12月にオープンし、700社の応募の中から選ばれた93社が入居しています。
 
 
1社30~90㎡が家賃タダで与えられ、2~4年の入居が可能。24時間オープンの開放・共有空間が用意されています。
 
 
CJエンタテイメント社が賛同して、スタジオや編集などの施設を提供しています。
CJエンタメ社はソウルの「デジタルメディアシティ」にも、文化大陸観光省と連携して「文化創造融合センター」を整備しています。産官連携のモデル。
「デジタルメディアシティ@ソウル、やるなぁ。」
 
 
インキュベーション機能を提供する法律、会計、VC、コンサルなど11社が1フロアを使っています。これは非常に重要なインフラ。ベンチャーが入居する強いインセンティブになります。
 
 
同居する「コンテンツ価値評価センター」に目が止まりました。企業が持つコンテンツの市場での資産価値を計量化し、出融資を導くサービス。映画、ゲーム、放送、アニメなどの独自モデルを開発、20億円規模のファンドも設け、自らも投資するそうです。
 
 
公的機関によるこうした仕組みは世界初とか。8年ほど前、日本政府もコンテンツ資産価値を軽量化する構想があったが頓挫しました。韓国はやる気があります。
ただ、帰国後発生した朴大統領の政治スキャンダルにより、これら文化政策が影響を受けるのは必至。今後の成り行きが心配です。
民間の動きも。現代グループのアサンナヌム財団が運営するインキュベーション施設MARU180も訪れました。
 
 
アプリ、VR、eコマース、医療、ウェアラブル、映像編集など1年半の間に9社が入居しています。
 
 
2つのVC、多くのサポート企業と連携して、オープンな環境を作って起業支援。CiPのイメージと近いです。
 
 
韓国外交部(外務省)ホン審議官を訪れ、これらの動きについて日韓連携を進め、世界市場を開く方策を考えることにしました。日本政府にもアクションを打診します。

ところで。

KMDの学生ユンイナンさんを訪問。博士号を取る前にスゴいラボを作ってしまった人(いいなぁこのラボ)。
 
 
マンガの原作者で、NAVER、カカオトーク、LINEでベストセラーをバンバン出してます。
 
 
マンガの原作を書きつつ、新人マンガ家を発掘、ウェブや紙のマンガを日韓で連載・出版し、さらにTV、映画、ゲームへとマルチ展開するビジネスモデルも構築したスゴい人。
ユンさんと韓国マンガのこともかつて2度ほどメモしました。
「スゴい! NAVERのウェブマンガ」
「3年ぶりのNAVER本社とYLAB」
 
マンガはスマホで見るもの、というジャンルを作り上げています。ユンさん、ネームをスマホにペン入力して作家に送ってるんですよね。このシステムで、日本より先に中国に攻め上がるみたい。
 
 
そして、ラボだけじゃなくて、学校も作っちゃった。200人が学んでいるとか。ここから育つマンガ家がユンさんのシステムに乗って世界に飛んで行く。大丈夫かな、日本のマンガは。
以上です。

編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年3月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。