森友学園の経営破たんは不可避か

関係者の責任追及に幕を引くな

大阪府の森友学園問題は、問題というより事件に発展しつつあります。小学校設立は府が不認可、学園側も認可申請の取り下げです。「白紙撤回、学校が破たんすれば一件落着。追及は終わり」との思惑を持つ政治家、行政、自治体関係者はいますね。今後は、籠池理事長の責任追及に焦点を絞ろうとする力学が働きます。それではいけません。

テレビのバラエティ番組のように、なにもかもごたごたに報道されています。忍び寄っているのは、森友学園の経営破たん問題でしょう。これに絡むのが籠池理事長側の刑事責任の有無です。国有地売却で不可解な動きを見せていた政治、行政関係者は、「国会や自治体の段階から捜査機関に舞台が移ってほしい」という思いでしょうか。

森友学園の経営は相当に深刻でしょう。3通りも作成した学校建築費は、真ん中の約15億円が妥当なのでしょうか。校舎の外形はほぼ仕上がっているように見えます。工事費の支払いはできますかね。不透明な問題を次々に起こした森友学園ですから、府は今後も認可しないとみるのが自然です。そうなると、学校経営はますます困難になり、この土地は国(近畿財務局)が買い戻すこと(1億3千万円)になります。

支払い、返済で経営が行き詰まる

そのためには、校舎を取り壊して更地にし、現状回復する。工事事業者への支払い義務はある。建築費にかけた15億円(未払い分を含む)はどぶに捨てるようなものです。校舎の解体工事には、多額の費用がかかる。木造建築向けの補助金6200万円も、国は返還を求める。約束違反として、集めた寄付金4億円を返せという人もでてくるでしょう。別の学校法人が身代わりになってくれない限り、重大事態です。

巨額のおカネの支払い、返還に迫られても、そのカネはない。経営はどうなるのでしょうか。系列の幼稚園の資産規模も大したことはないでしょう。債務不履行、倒産状態になります。籠池理事長は「開校はあきらめたわけではない」という態度を取り続けています。のらりくらりと支払いや返還を先延ばしにする算段なのでしょうか。それも長続きするはずありません。

国会の質疑や記者会見での説明を聞いていて、そのレベルでは、問題をまず解明できないと思っていました。会計検査院が調査を始めていますし、豊中市議らが近畿財務局を背任容疑で大阪地検に告発する方針を明らかにしました。籠池理事長はまともな人物とはとても思えず、松井府知事も「報告書は詐欺的」と、言ったほどです。強制権を持つ捜査当局、調査機関が踏み込んでこないと、くるくると発言を覆す男をこれ以上は追及できますまい。

府は財務内容の把握を急げ

森友学園問題の焦点は、理事長側の詐欺的、虚偽的行為、政治工作を事件として、どこまで立件できるかに移ります。もらった寄付金、補助金、助成金を適正に会計処理していたかも把握しなければなりません。この種の事件にありがちな私的な着服、横領の有無も確認する必要があります。学校認可、監督に直接的な責任を負う府としても、事件として告発すべきかを検討しなければなりません。愛国教育という看板を掲げた学校法人の実態の解明が必要です。

検察などの機関の対象からは、漏れる問題も少なくありません。経営規模の小さな学校法人が15億円もする校舎を建設、運営するあたって、府は財務内容の健全性を確認しないまま、当初、認可してしまったのはなぜか。工事計画の内容を業者にあたってチェックしなかったのはなぜか。

売却した国有地がゴミ捨て場同然だったことを、国側は本当に知らなかったのか。国有地の管理をしていなかったのではないか。格安で払い下げられるよう仕組まれたのではないか。極めて短期間で払い下げが決まった経緯に不自然さはないのか。不透明な政治力が働いた形跡はないのか。理事長周辺だけの問題点を洗い出すだけでは、疑惑隠しと受け取られるでしょう。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年3月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。動画引用リンクはYouTubeより。