子どもの健康を守るため、保育士は非喫煙者のみを採用している、認定NPO法人フローレンスの駒崎です。
今回は、ようやく世界に遅れること10数年で、屋内禁煙の法律が提出されたのに、自民党の半分が猛反対して、危機的な状況になっているということで、筆をとりました。
受動喫煙で1.5万人が死亡
喫煙している人が健康を害しやすいのは当たり前なのですが、喫煙のタチの悪いのは、副流煙を吸わされる周囲の人たちも健康を害すること。
国立がんセンターによると、受動喫煙によって、肺がんや脳卒中は1.3倍、乳幼児突然死症候群の罹患率は4.7倍にもなります。親の喫煙によって、子どもの突然死の割合が5倍近くにもなる、というのは、親が子どもを間接的に殺すことになる、ということです。
「努力義務」じゃ解決できず
政府は国民の健康を守るため、今から14年前、2003年に「健康増進法」を施行。その25条に
「・・・多数の者が利用する施設を管理する者は、・・・受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。」
と明記しました。事業者に禁煙の努力義務(「努力してね」)を課したのです。。
しかし、やはり「努力してね」というだけの努力義務は効果が低かったのです。
飲食店・遊技場(パチンコ・ゲーセン等)・職場などで、多くの非喫煙者が受動喫煙の被害にあうことになったのです。
日本は最低レベルの規制
日本は国際的に見ても、規制が緩く、WHOのレポート曰く「世界最低」ランクに属しています。
また、WHOとIOC(国際オリンピック委員会)の2010年合意では、「たばこのないオリンピック」を推進しようということなっていて、合意後、日本を除く全てのオリンピック開催国・開催予定国は、罰則を伴う法規制を実施しています。
日本だけが、取り残されているのです。
国民の8割は屋内禁煙に賛成
それもあり、Yahoo!ジャパンの調査によると、約8割弱の人々が受動喫煙防止法に賛成しています。
自民党たばこ議連が猛反発
しかし、自民党議員の半分を超える、約280人が参加していると言われる「たばこ議員連盟」は、この受動喫煙防止法に猛反発をしています。
・『自民たばこ議連、禁煙義務化に反発し対案公表 「このまま通すわけにいかない」』
・『自民たばこ議連3/7臨時総会がどんな痴呆議論で盛り上がったか、みなさん読んでみます?』
ここで、受動喫煙防止法と、彼らの「対案」を見比べてみましょう。
簡単に言うと、
「学校や病院内でもたばこを吸えるようにしろ」
「職場でも自由にたばこを吸わせろ」
「飲食店は、『喫煙』の表示をすれば良く、非喫煙者の客や、アルバイトの受動喫煙は自己責任」
です。
むちゃくちゃユルユルで、喫煙天国と言って良いでしょう。
受動喫煙防止法が審議入りできず
このままいくと、受動喫煙防止法を国会の厚労委員会で審議入りさせることはできません。
たばこ議連と、その後ろのたばこによって利益を得ている方々のロビイング力は非常に強く、一方で規制に賛成する方々は特に声をあげないので、たとえ多くの国民が望んでいたとしても、政治力は弱くなってしまうのです。
あなたにできること
このまま、受動喫煙によって交通事故の4倍の人たちが死んでいくことに、「もういやだ」と思うあなた。
子どもが突然死で殺されてしまうのは嫌だ、と思う母親のあなた。
自分の娘がアルバイトで勤める居酒屋で、受動喫煙被害を受け、後で健康を害するのは嫌だ、と思う父親のあなた。
今が、声をあげる時期です。
SNSで、
#受動喫煙防止法に賛成
#受動喫煙で死にたくない
というハッシュタグで、呟きましょう。
また、あなたが自民党たばこ議連の主だった議員の地元のお住まいなら、「選挙区に住む者なんですが、受動喫煙防止法に反対しないでほしい」とメールや電話をしましょう。
彼らは、あなたの意向や健康を無視しても、大したことはないだろう、と考えている人たちです。
しかし、国民の健康というのは「大したことなんだ」ということを、思い知ってもらわなくてはいけません。
そろそろちゃんと怒りましょう。たかだか趣向品に過ぎないたばこによって、人が死んでいく社会を終わらせるために。
*データ等出典
厚労省「受動喫煙防止対策強化の必要性」2016年3月8日
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年3月13日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。