豊洲市場に関する法的な問題は完全に決着がついた

2017年03月17日 02:00

ども宇佐美です。

また豊洲市場についてです。
現状豊洲市場については百条委員会で過去の経緯の整理が行われている一方で、予算特別委員会では小池知事の「豊洲市場は安全ではあるが安心とは言えない」という発言が物議を醸しているわけですが、その辺の細かい動向は一度忘れて今回は豊洲市場の開設条件と、それにまつわる法的な問題について少しまとめたいと思います。

さて現状「豊洲市場の開設条件となる安全基準」を議論するときに三つの基準が想定されています。

一つ目は「完全に汚染を除去する」という基準(①石原基準)です。これは共産党などが都議会で度々主張し、石原元知事が非公式な場(例えば自由報道記者協会)で発言していたものです。豊洲の土壌・地下水の汚染には「自然由来のもの」と「東京ガスの操業由来のもの」の二種類があるわけですが、この基準では両方の汚染は除去されなければいけないことになります。なおここでは「汚染の除去」という言葉を、土壌汚染対策法の環境基準の達成、という意味で使っているわけですが、自然由来の汚染を除去するとなると都心部全体の地下に大工事を施す必要が生じますから。この基準の達成は不可能に近いです。

二つ目は「操業由来の汚染を除去する」という基準(②専門家会議基準)です。これは東京都が従来から都議会で答弁してきた公式な基準で、豊洲市場の汚染のうち操業由来の汚染のみを除去する、という専門家会議が目標として掲げていたものです。ただ専門家会議の報告書ではあくまで「環境基準以下を達成することを目指す」と書いているので、そもそもこの基準を豊洲市場の開設の絶対的条件として適用することを求めていたかは疑問です。

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(http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/pdf/senmonkakaigi/houkokusho/houkokusho_001.pdf より)

 

実際豊洲新市場整備方針で求められていることはあくまで<「豊洲新市場予定地の土壌汚染対策工事に関する技術会議」の提言を もって都の土壌汚染対策とする>ということにとどまっています。要は「技術会議で決めた土壌汚染対策を誠実に履行すること」を新市場整備の条件としており、必ずしも環境基準の達成を求めているわけではありません。なお都庁が技術会議の提言に基づいた土壌汚染対策を実行したことは2014年11月に技術会議によって確認されています。

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(http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/project/step/ より)

このような背景を考慮して、環境基準の達成を豊洲の開設条件から切り離したのが舛添知事です。舛添知事は環境基準を達成しなくとも土壌汚染対策法上はなんら問題ないため、「技術会議に定められた汚染対策を実行すること」を豊洲の開設条件としました。(③舛添基準)前に本ブログでも書いた通り舛添添知事は2014年12月に安全宣言を出していますが、これは11月の技術会議を受けたものと考えられます。あらためて舛添知事と記者のやり取りを見るとこれが明確です。

【記者】すいません、もう一つ。土壌汚染工事の関係なんですけれども、この間の技術会議で場長はこれで土壌汚染は解消したというふうに認識しているということを最後に言われたんですけども、それは実質的な安全宣言だと捉えていいんでしょうか

【知事】基本的には、まさに何重にも安全な措置を取ったということが一つ。それから、この土壌の安全措置というのは、絶対にやれという法的に決められたものではなく、これはこれできちんとやる。しかし、そこに市場を開設するかどうかは、その措置をやらないとできないというような、そういう決まりではありません。法律を調べればわかりますけれど、念には念を入れてきちんとそれをやったということをしっかり申し上げたのであって、これをやらなかったから開けませんとか、これやったから開きますという因果関係の話には法的にはなっておりません。しかしながら、きちんとそれはやって、安全だということで進めていくということです。もし不明であれば担当に聞いてください。どの法律の何に基づいてどうだということを、私よりきちんと説明できると思います。より明確に根拠を示せると思います。

以上のように、豊洲市場の開設条件については結果的に、①石原基準、②専門家会議基準、③舛添基準、の三つが存在しており、これが混乱の原因の一つになっているわけですが、この背景には卸売市場法の解釈の不安定性がありました。中央卸売市場の開設には最終的には農林水産大臣の認可が必要になるのですが、この認可の基準の中に

「当該申請に係る中央卸売市場がその開設区域における生鮮食料品等の卸売の中核的拠点として適切な場所に開設され、かつ、相当の規模の施設を有するものであること。」

というものがあります。この文言につき、農水省は告示生鮮食料品等の安全・衛生上適切な環境にある地域であること 」と指針を示しており、移転反対派はこれを「土壌汚染対策法上問題なくても、卸売市場法上は環境基準を満たさないままでは生鮮食料品等の安全・衛生上適切な環境でないので移転できないという意味だ」と解釈して長年移転反対の論拠としてきました。農水省はこの点に関して終始曖昧な態度を取ってきたのですが、今年の2月16日の総務委員会において維新の足立康史議員の質問に関して以下のように答弁しました。

○足立委員 だから、満たしている、しっかり、形質変更時要届出区域である豊洲において豊洲市場を建設する、その建設する行為自体が形質変更ですから、それについては既に届け出が行われ、手続は当該規制を満たしているということでいいですね。

○丸山政府参考人 お答え申し上げます。
中央卸売市場は食品流通の重要な基盤でございまして、食の安全性や消費者の信頼を確保することが重要な課題でございます。豊洲市場への移転について、市場開設者である東京都から卸売市場開設の認可申請があった場合、御指摘のように、卸売市場法の認可基準に従って適切に判断をすることにしております。具体的には、卸売市場法第十条に基づきまして、農林水産大臣が策定する中央卸売市場整備計画に適合するか、生鮮食料品等の卸売の中核的拠点として適切な場所として開設されているか、業務規程の内容が関係法令に違反していないか、また、卸売業者、仲卸業者等の業務の適正かつ健全な運営を確保する観点から適切に定められているか、事業計画が適切で、その遂行が確実であるかについて判断することとなります。御指摘の土壌につきましては、土壌汚染対策法への違反が認められない場合、関係法令の一つとして、認可の障害になるとは考えてございません。

これは非常に重要な答弁で農水省は卸売市場法も豊洲市場の開設にあたって土壌汚染対策法を満たしていれば十分という見解をようやく示したことになります。裏を返せば

「豊洲市場の開設には「舛添基準」を満たせば法的には十分だ」

と農水省がお墨付きを与えたことになります。これは非常に大きな進展です。足立康史議員のお手柄といっても良いでしょう。そんなわけで、もはや豊洲市場移転についての法的な議論は完全に決着がつきました。なお環境アセス手続における地下ピットの申請漏れについては、そもそも東京都の条例に基づいてやっている手続にすぎず法律上はなんら問題ありません。またおそらくは条例37条の「軽微な変更」と取り扱われるべき内容でしょう。いずれにしろ判断者は小池知事です。

つまり、豊洲移転についてはあとは小池知事が決断するだけということです。言い訳はできません。移転を延期したのと同じように、移転を決断すれば良いだけです。

おそらく3月19日の専門家会議で安全宣言が出されるものと思われますので、月内に小池知事本人によりなんらかの決断がなされることを待ちましょう。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「宇佐美典也のblog」2017年3月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のblogをご覧ください。

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