「籠池爆弾」報道で、東スポが見事に冷静だった件

2017年03月19日 06:00

籠池氏が次々に連日炎上しまくって爆弾発言を繰り出し、菅野完氏がそこに油を注ぎ「大騒動」。大手メディアの記者たちも菅野氏の自宅に上がり込んで彼と一緒に籠池氏の娘をツイキャス中継で“共同取材”するなど、翻弄されているというか、見方によっては劇場化に加担している。一般紙はさすがに取り上げてもまだ抑制的に淡々としていたが、その翌朝、大手スポーツ紙の中には、案の定センセーショナルに報じる社も出てきた。

(日刊スポーツ)菅野氏公開「100万円受領証」に安倍晋三の文字

中身は引かないが、籠池氏の娘の言い分でほぼ埋め尽くされており、安倍首相サイドの否定コメントは最後の一文の付け足しレベルだ。だが、アゴラで池田が指摘するように不審点や矛盾は多い。スポーツ紙の社会面は多少とんがったことを書いても社会的に許容されていたが、ネット時代になって選挙中に特定の候補者を著しく有利・不利にする記事が拡散するようになるなど、社会的影響力は小さくなくなっており、今回のような「情報戦」では取材する側の眼力も問われる(その辺の話は、拙著『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』で書いたのでぜひご覧ください)。

一方、東スポはボリュームを割いているものの、籠池氏の爆弾発言を実にドライに見ているばかりか皮肉交じりで報じている。

(東スポweb)籠池爆弾とんだオチ!?寄付疑惑は“KYアッキー劇場”で終了か

世間一般では「東スポ」というと、そのぶっ飛んだ独自路線で記者も記事もいい加減という印象があるかもしれない。有名な伝説では、1963年のケネディ大統領暗殺事件で各紙が大々的に報道する中、東スポだけでは当時の外国人レスラーの話題で「ブラッシー血だるま」を一面に持ってきたという話がある。しかし、これは都市伝説で誤解のようだ(詳しいことはウィキに書いてあるので読んでください)。

私も野球記者をやる前、実は、世間と同じような印象を持っていたが、実際に記者たちと一緒に現場で付き合うようになると、まったく違う。取材は丹念に行い、情報も入手し大手紙並みに正確に書く時は書く。ある球団の広報さんが「東スポって実はしっかりしているでしょ」と苦笑していた。

意外に知られていないが、運営会社の東京スポーツ新聞社は、日本記者クラブの正会員であり、運動記者クラブにも加盟している。しかし切り口が独創的で大胆なだけだ。まあ、たまに「カッパ来襲」とか「UFO」「ネッシー」等のお笑いネタもあるが、他のスポーツ紙がビビって書かないようなジャニーズの不祥事とかも平然と書くなど、やる時はやる。日刊やスポニチ等の大手紙との差別化で敢えてマーケティングしているのだ。当然、記者の能力は高い。

だから記者クラブに入れてもらえず(※下記に注)、センセーショナルに反権力バイアスで書きまくりの日刊ゲンダイなんかより、よっぽど「まとも」だとは思っていたが、今回も記者が本質を見極めていると思わせてくれた。それはこの最後の段落に集約される。

一部では昭恵夫人の参考人招致を求める声も上がっているが、決定的物証がなければ、100万円寄付問題はグレーのまま。またこの寄付問題に焦点が当たってしまえば、国有地の払い下げや、大阪府による同校認可の経緯など、問題の本質にはたどり着けない。当初「政権も吹き飛ぶ」といわれた大スキャンダルだが、証人喚問も“籠池劇場”のコントとなりかねない。

一連の騒動では、赤旗も見事に振り回されていたことが昨日発覚したが(参照:ヤフーニュース)、東スポは、ことの推移を冷静に見ていただけでなく、見出しの「籠池爆弾とんだオチ!?」にあるようにユーモラスさと、スポーツ紙お得意のセンセーショナルさという持ち味も発揮している。年明けも、蓮舫氏の二重国籍問題に関してビートたけしさんのインタビューを掲載していたが、あらためて東スポが「優秀」であると感じた次第。実にお見事でした。

※注 記者クラブ加盟が良いかどうかは今回は別の話。クラブ取材にも問題点はあることはいうまでもない。ただ、今回は、東スポと日刊ゲンダイの立ち位置の違い、メディア業界で同業他社からの信頼の差をわかりやすくするために引き合いにした。

※アイキャッチ画像の東スポ紙面はNAVARまとめ「思わず吹き出す!?みんなの「思い出の東スポ1面」が面白い。」より

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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