シェアリングエコノミー、規制から振興へ

中村 伊知哉

シェアリングエコノミー検討会議。
内閣官房IT戦略室が主催。遠藤政府CIOがヘッド。総務、経産、厚労、国交、環境各省も参加しています。中央大安念教授が主査です。ぼくは東大・生貝直人さんらと並び委員を務めました。

総務省・情報通信白書2016は、日本はシェアリングエコノミーの認知度が他国に比べ低いことを指摘しています。
民泊は米87%、独86%、中91%、韓91%に対し、日本は72%。
Uberは米85%、独80%、中91%、韓82%に対し、日本は48%。

そして、その原因として、事故やトラブル対応など安全・信頼性の不安が高いことが指摘されています。利用面・需要面への対応、不安解消策が求められる状況です。

昨年、政府が検討した際には、参入規制、情報提供義務、海外への規制適用など規制色の強い議論からスタートしました。

しかしその後、シェアリングエコノミーの意義を強調し、振興するとともに自主規制で対応するという方向に舵を切りました。賛成です。振興と安全のバランスを図るスキームを作りたい、その思いから始まりました。

会議冒頭、シェアリングエコノミー協会からプレゼンがありました。自主ルールと認定審査の組み合わせ、シェアリングシティ振興策について。自主規制を行う民間のベースはある、ということです。

そして東大・生貝さんが官民による「共同規制」について説明しました。政府規制、民間自主規制の双方に難しさがあり、その間のグラデーションを解説。生貝さんはこの分野の第一人者になられましたね~。

これに関し、産総研・持丸さんがコンサルと認証は別法人にすべきと主張。大学の博士号はコンサル(教育)と認証(授与)とが一体となっている、と鋭い!ご指摘。

シェアリングエコノミーの場合、業法をどう適用・緩和するかが一つのポイントです。ただ、シェアリングは「業」じゃない「C2C」が柱になるため、業法の枠を超えるところからの議論が必要です。

ここでは消費者保護が重要課題ですが、提供者も利用者も消費者である、という点に立つことも大事となります。

これまではB2CのBを規制すれば効率的に回る、という業法の世界だったのですが、C2C、特に提供するCと利用CとPFの3極をどう制御するか、ということです。

さて、サービスの水準を確保するため、事業者が自主的ルールを作る仕組み、サービス提供者を認定するような仕組みに議論が進みました。そして、そのためのガイドライン・モデルが検討されることとなりました。

官民のある程度の合意のもとで、公的規制色の薄い共同規制の仕組みを作る。自由な米西海岸的アプローチと、従来の日本の業法的な規制アプローチの中間のどこかに落とし込む工夫です。

もう一点、重要なのは、ビジネスの自由度です。

業法で規制されているクロの領域と、ビジネスOKのシロの領域はいいとして、そうではないグレーゾーンが問題。そしてそこにシェアリングエコノミーのうまみもあります。しかしグレーだとシュリンクしてビジネスが起こりにくいのが日本。

実は、そのグレーゾーンを解消する制度を盛り込んだ「産業競争力強化法」なる制度が施行されています。現行規制が適用となるかどうか不明の分野について、事業計画が適用されるか否かを省庁に確認してシロクロつけたり、規制緩和措置を提案したりできるスキームです。

こうした制度の活用と、措置の拡充策もテーマとなりました。日本型のシェアリングエコノミーが元気に回るよう、知恵を絞り、アクションを起こす。その認識のもと、議論が進められることになりました。

(つづく)


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年3月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。