コンビニ交付の普及よりも、証明書の交付不要を進めよう

静岡県富士市で、市役所出張所での住民票の写しなどの交付業務を廃止する条例改正案が否決されたとのニュースが半月ほど前に流れた。市側はマイナンバーカードを利用してのコンビニ交付で代替できると考えたが、出張所での交付実績が全体の42%を占め、一方、コンビニ交付に必要なマイナンバーカードの取得率は7%にとどまっているとして市議会が反対した結果である。

そもそも住民票の写しなどの証明書はどんな取得目的で発行されているのだろうか。いろいろ調べたが横浜市における2008年度の調査しか見つけることができなかった。それによると、住民票は住居20%・免許資格19%・社会保険18%など、印鑑証明は住居25%・自動車17%・銀行手続き10%、戸籍謄本・抄本はパスポート48%・税務11%・社会保険9%であった。他の行政組織に提出するために証明書の多くが交付されていることを、これらの数字は示唆する。

マイナンバー制度の目的の一つは、書面での行政組織間のやり取りに代えてマイナンバーを用いて情報連携を図り、行政を効率化し国民の利便を向上することである。これと比較すれば、マイマンバーカードを用いてコンビニで証明書の交付を受け、それを他の行政組織に自分で持っていくことが、行政効率化にも国民の利便向上にも役立っていないと理解できるだろう。

総務省は、3月28日に、戸籍謄本等の提出が求められている行政手続きのうち40について、必ずしも提出は必要ではないとの調査結果を発表した。そのうえで、それぞれの行政手続きの主管庁に対して制度の見直しを勧告している。

制度が見直されれば戸籍謄本等の提出は不要になり、出張所にもコンビニにも出かけなくて済むようになるので、この勧告は正しい方向を向いている。次には、共通番号法が定める行政手続き以外に、マイナンバーを利用した情報連携が可能な手続きはないか調べてほしい。その結果に沿って共通番号法を改正すれば、いっそう証明書の発行需要は減少し、富士市が最初に考えたような出張所での発行廃止も実現するだろう。