森友で注目の公的不動産は570兆円もの眠れる可能性

2017年03月29日 11:30

森友学園問題を機に、国有地の民間への売却が久々に社会的に注目されているが、国交省のデータによれば、日本国内の不動産約2400兆円のうち、公的不動産は約570兆円と、企業不動産の約470兆円を上回るというから、改めてその規模に驚いてしまう。

TRUNK社の資料から引用

国会が変に盛り上がっているのは奇遇ながら、きのう(3月28日)の夜、民間企業の経営者らが公的不動産の活用のあり方をトークするイベントがあり、知り合いの運営関係者から取材のお誘いを受け、メインゲストの一人が松田公太さんということもあり、覗きに行ってきた。

北青山のTRUNK社内で行われたイベント

この「パブリック・アライアンス・トーク」というイベントは、結婚式のプロデュースで知られるテイクアンドギブ・ニーズの野尻佳孝会長が新たに手がけるホテル開発事業の会社「TRUNK」が主催。野尻さんといえば、若かりし頃の公私に渡る派手な立ち回りがよくメディアに取り上げられていた印象があったので(笑)、公有地界隈になぜ突っ込んできたのか、ちょっと意外だった。

しかし、地方創生界隈の第一人者にして、東洋経済オンラインの発信で飛ばしまくっている木下斉さんたちも巻き込み、松田さんや堀江さん(6月登壇予定)らを入れ替わりで招いては、公有地活用のあり方を考えるイベントを今年いっぱい毎月やるというのだから、「そこまで本気」な理由に興味を持った。昨晩は、行政や不動産業界の人たちも含め、100名を超える人たちが傍聴。メディアも10数人が来て関心はなかなか高いようだ。

地方創生でおなじみ、木下斉氏(右)と、建築家の馬場正尊氏

イベントでは、公共施設のリノベーションの成功例が色々と示されていく。松田さんからはタリーズコーヒー時代の2004年当時としては画期的だった東大病院内の出店事例が紹介。また、同じくメインゲストの孫泰造さんは、出身地の福岡で実現を目指している防災都市構想「ポップアップ・コモンズ」についてプレゼン。これは「ポップアップ(飛び出す)」というネット用語が示す様に、コンテナのポータビリティーに着目。平時は住居やレストラン等として使い、災害時は被災地にポップアップして支援や避難生活の拠点に活用するというユニークなものだ(詳しくは:#FUKUOKAの本人インタビュー)。

ユニークな構想を披露した孫泰造氏

この日は岡山県瀬戸内市でこの3月に廃止される診療所の跡地利用について、現地の若手起業家とスカイプでアイデア活用について論じ合うシーンもあれば、レギュラー登壇者で、公共空間のリノベーションに取り組む建築家の馬場正尊さんが、葛飾区役所の旧職員寮をバックパッカー向けの宿泊施設として再生させた事例も目を引いた。会場の膝元・渋谷区の長谷部区長が進めている、民間企業とのコラボした福祉事業所の事例も、野尻さんから紹介された。

公的不動産の活用例を説明する野尻佳孝氏

イベントを通じて、改めて注目したいのは公共不動産の「活用」であって、森友で話題の国有地に見られるような「売却」ではない点だ。タリーズコーヒーの東大病院出店はもちろん、葛飾区の旧職員寮も千葉県の宿泊事業者が借り受けて運用している。イベント後に木下さんに話を聞くと、「売却よりは、国民の立場から長い目でみれば毎年何億か入ってくるほうがいいし、得するのになぜ売ってしまうのか」と指摘する。自治体としては貸した方が、上物を立てて固定資産税が入り、さらに底地を持っていれば地代も入って「ダブルで儲かる」というわけだ。

政治家時代の経験談も交えて公的不動産の活用を語った松田公太氏

イベントで、松田さんが指摘していたが、デベロッパーに売却した公有地にマンションが乱立する状況にみられるように、国や自治体が所有権を手放した場合、景観保全等の公共性の問題や公益性のある機能が損なわれても、「売ってしまうと何もいえなくなる」(木下さん)という点は、今後の公的不動産のあり方を考える際の一つの目安なのは確かだろう。人口減少で税収の落ち込む近未来が見えている中で、木下さんは「売却より活用」こそが自治体の福祉の財源を守る点でも有効とみている。 

ちなみに、本編では松田さんが参議院議員時代の話として、紀尾井町の議員宿舎建設を巡るエピも披露。議院運営委員会で審議を決めた際、松田さんは理事でただ一人反対したが、ほかの政党は、日頃の政策論争で真逆の立場である自民から共産まで“ほぼ全会一致”。そこで松田さんは、保育施設や老人施設と併設により、「議員がボランティアで保育や介護に参加」を提案したそうだ(産経新聞が併設の構想をかつて報じている)。松田さんを持ち上げるつもりで言うのではないが、そうした民間感覚があり、大胆な提案ができる政治家が永田町からまたいなくなってしまったことが改めて残念に思った。


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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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