知財本部 海外・基盤新ラウンド

知財本部コンテンツ会合@霞が関。ドワンゴ川上さん東大喜連川さんよしもと大崎さんレコ協斉藤さんセガ岡村さんニッポン放送重村さん竹宮恵子さんら。海外展開と基盤整備の新ラウンドです。

政府の取組説明、総務省豊島課長:放送コンテンツの海外売上を2018年度までに2010年の3倍にする目標。2014年で144億円と倍増、順調。海外放送枠の確保と共同制作を推進。最近はローカル局の参加も見られるようになった。

外務省高水主席事務官:国際協力基金の事業により、日本のドラマ、アニメ等を無償提供。これまで48か国の放送局に192番組を提供。
(総務省の放送コンテンツ政策との連携・整合・戦略性が気になります。)

経産省1 平井課長:JLOP事業でコンテンツのローカライズやプロモーションを支援。これを活用して初めて海外展開した事業者は405社で、全JLOP利用者の36%。これまで内向きだったものが外に開かれつつある。

経産省2:クールジャパン機構はこれまで18件投資。リスクマネーを供給。経産省のコンテンツ海外展開事業は10年目を迎え、行政評価レビューが行われたが、プラス評価を受けた。
(これはなかなか大したもんです。)

経産省3:基盤強化としてアニメのデジタル制作環境整備・マニュアル化、DCEXPO/Innovative Technologiesの開催など。
(後者はぼくも審査員として参加しています。有意義です。)

経産省4:アニメ制作業界の下請ガイドラインを7月に改訂。契約の書面化やベストプラクティスの普及啓発を図る。
(劣悪とされる制作現場の環境改善に向けた重要な施策。これぞ行政の仕事。経産省、仕事してます。)

さて、ここから議論。いくつかピックアップします。

瀬尾委員:クールジャパンは海外にコンテンツを売る段階から次に進んでいる。2020年の後をにらみ、次のステージに移る施策、メッセージを打ち出す時期。
(賛成です。ビヨンド・クールジャパン。)

相澤委員:補助金モノから自立して事業を継続することがポイント。
(補助金行政からの脱却もテーマになり得ます。)

岡村委員:ゲームソフトの輸出は、2007年の7000億円から2014年は900億円に激減。業界の構造も変化している。政府の施策はいつまで続くか不明であり、それがなくなったときの足腰の強化が重要。

重村委員:業界団体の基盤も脆弱で、国の補正予算頼みになっている。中長期タームでの大方針が必要。省庁連携による施策の実効性が重要だが、省庁間のヨコ串も機能していない。

瀬尾委員:省庁連携の連絡会議等を置くべき。業界団体も吸収合併などによる効率化、再編があってよい。
(国のヨコ連携対策、民間の業界調整・再編も、次のステージのアジェンダになり得ますね。)

佐田委員:大学の知財教育現場では、学生にコンテンツ産業の魅力を伝えにくくなっている。学校教育の中でコンテンツをどう位置づけるか、重要テーマ。
(それは業界にとって大切なアジェンダ。)

大崎委員:近未来のコンテンツを描くアニメなど、コンテンツやコンテンツ産業の未来を示すコンテンツやメッセージを作ってみればいい。
(面白いアイディア。関係者で検討しましょう。)

川上委員:おカネをもらえるのは書類づくりがうまい会社。でもおカネを渡したい相手は違う。日本のコンテンツは個人の作家性に依存している。その個人のすくい上げは至難。クリエイターを発掘するための場づくりが大事。CJ機構が作品を公募して、オープンなネットの場で審査するような仕組みがいい。

喜連川委員:ノーベル賞受賞者はみな書類を書くのが上手。下手な人は埋もれていく。
(この川上vs喜連川の掛け合いは、知財本部の名物ですが、いつも深いところで考えさせられます。)

野坂委員:2020年に向けアピールすべきではないか。

(そうです。このラウンドは、クールジャパン新ステージ=2020コンテンツ戦略になる。それは、映像配信、VR/AR、4K8K、IoT/AIなど、これまでの戦略とは別の軸が一斉に現れたタイミングだから。やりましょう。)


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年4月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。