AIの知財問題、さっそく風雲急。

知財本部・新情報財委員会 第2回。AIの保護・利活用の在り方。学習用データ、AIプログラム、学習済みモデルについて、制度論をたたかわせます。

AIはブームではあるが、汎用・万能のものは展望できておらず、個性のある目的別のAIが無数に生まれてくる。その組み合わせが重要。集合知ならぬ集合AIで威力を発揮する世界が近づいている。・・こうした急激に進展する状況をにらみつつの議論です。

汎用AIではなく、人の知能を機械に担わせる専門のAIがディープラーニングで産業利用される。その可能性を展望し、制度を検討するのが今年のミッションです。排他的利用権(著作権)、営業秘密、契約、このあたりが話題となります。

例えばAI生成物の著作権侵害はグレイゾーンだといいます。アメリカはフェアユース的に扱っても、日本ではアウトのケースがあります。そこで国内制度を整理したとしても、国際的な競争や利用の観点が重要になってきます。

宮島委員は、日本はグレイゾーンに慎重であり、創作性とビジネスチャンスを高める方向での検討と、そのメッセージ発信が重要と指摘。柳川委員は、保護と利活用のバランスが崩れることがポイントだとコメント。そうですね。

清水委員は、ソフトウェアはオープンソースが主流であり、著作権の世界ではなくなっていると指摘。PPAPはYouTubeの二次創作で稼いでいる、とも。政府の議事録に「ピコ太郎」という文字が残るのはうるわしいです。

瀬尾委員が人格ならぬ「AI格」を持ち出しました。学習していく幼児から大人までのさまざまなAIを想定して全体像を展望しようとの提案。・・またしても風雲を告げる展開であります。

清水委員は、日本は計算資源が乏しい。だからみんなが使えるAIポータルともいうべき環境を整備すべし。と提案。これに対し、国立国会図書館のようなAIナショナルアーカイブがあっていいという提案もありました。制度論からいきなり振興政策論に拡張しました。

喜連川委員:アルゴリズムのような方法論よりも、データを押さえる勝負。図書館で扱う著作物の比重はデータに比べ小さくなっていく。データの優先度を上げるべき。今は法制度よりも、データや予算や人材などの資源を集中的に突っ込む戦略を講ずるべき。
制度と振興政策、技術進歩と国際情勢、いろんな変数をかけ合わせた方程式を解く作業が続くのであります。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年4月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。