「共謀罪」が都議選の争点?蓮舫氏の滑りっぷりに怒り

2017年04月22日 12:00

政治ではなく性事に励む自民党のゲス若手議員たちにも困ったものだが、突き詰めると、与党議員がそんな体たらくになっているのは、ジェラルド・カーティス先生の言葉を借りれば「野党が戦後のどの時代より最も弱い」から緩みきっていることにほかならない。野党第1党党首である蓮舫氏の能力に関しては、すでにアゴラが提起した二重国籍問題への対応ぶりで、国籍問題の是非を問わず、国民の間で疑問符がついて久しいが、先日の記者会見で示したこの発言には、一人の都民として国籍問題以上にガチで怒りを覚えた

蓮舫氏「テロ等準備罪は都議選の争点」(FNNニュース) 

タイトルにもあるように、「国政」マターのテロ等準備罪を、「都政」を問う都議会議員選挙の争点の一つにするのだという。このタイトルと動画に出ていた限りの発言に接したとき、過去の都知事選で、地方行政である都政や都議会ではどうしようもない脱原発などの公約を平気で掲げていた歴代のアレな候補者たちとダブって見えた(特にひどかったのが、「大島は消費税5%にする」などと街頭演説でのたまった鳥越俊太郎氏だが)。

ただ、テレビ報道での切り取り方の問題もあるかもしれないので、念のため、民進党サイトにある記者会見の起こしを見てみた。問題の発言のくだりはこれ。

安倍総理は答弁の中でこれまでも、この新たな「共謀罪」法案が通らなければ2020年の東京オリンピック・パラリンピックは開くのが難しいとまでおっしゃっているわけですから、何をもって難しいかという説明も、当然これからやりとりはさせていただきます。その部分では、東京都は最も主体的にこの法案について考えるべき対象の方達だと思いますので、都議会の争点の一つにはなると思います。

地方選挙で共謀罪を問う理由が意味不明

このロジックもちょっとずれている。たしかに安倍政権が“共謀罪”(政府の法案名はテロ等準備罪)制定の理由にオリパラを挙げているのは確かだが、そもそも “共謀罪”は、組織犯罪のグローバル化に対処する国際捜査共助を進めるため、日本も2003年に日本が加盟した「国際組織犯罪防止条約」で制定することが求められている「国際公約」。もちろん、捜査当局が暴走しないように制度設計をしっかりやらなければならないことも確かだが、それは国会の仕事だ。どちらにせよ、オリパラがあるかどうかに関係なく、都民だけが考える問題でもなく、都政や都議会で決められる政策マターの領域ではない。本来は国政選挙で問うべきアジェンダだ。

百歩、いや百万歩譲って地方選挙でテロ等準備罪の問題を問う意義があるかどうか考えたところで、せいぜい一定の民意を示す程度の効果でしかない。都民が都議選で問いたいのは、このJX通信社の世論調査にもあるように、まず景気があって、あとは子育てや介護など暮らし向きの課題が上位を占める。メディア露出が多い豊洲問題ですら下位に過ぎない背景を考えてみてはどうか。

JX通信社調査より(出典;米重克洋氏のヤフー記事)

記者会見の話に戻る。起こし文をみて気づいたが、蓮舫氏のトンチンカンな発言を引き出したのが誰かと思いきや、先日の長島議員離党時の記者会見で「野党共闘が国民の理解を得られるのになぜ離党するのか」などと質問というより政治的持論をのたまったフリーの横田記者だ。彼の蓮舫氏に投げかけた質問を引いてみよう。

都議選に関連して。メリハリのきいた政策を民進党として打ち出すのが重要ではないかと思うが、何かお考えになっている政策はないか。例えば、豊洲移転問題で築地存続・改修案でいくべきだとか、「共謀罪」が五輪開催が理由になっているので、五輪開催には「共謀罪」要らないとか、オスプレイの夜間飛行禁止とか、そういう政策があれば伺いたい。

まさに今おっしゃった「共謀罪」をめぐる政府の対応は非常に問題があって、テロ対策の実効性に乏しいと。東京五輪開催には、今おっしゃったテロに特化した未然防止対策を早急に考えるべきだと。これは小池知事の盟友の若狭勝さんも同じことをおっしゃっているわけで、であれば蓮舫代表と小池知事が直談判して、政府に対してどう対処するか、都議選の争点にするかどうか含めて、会談するお考えはないか。あと、都議選の争点に「共謀罪」は入れるという理解でよろしいのかどうか、あらためて伺いたい。

この質問の切り口の設定をみても、どういう価値観を持っている人間なのか、その評価は読者に委ねるが、筆者の目からは、蓮舫氏はすっかり誘導された、あるいは敢えて乗っかったようにしか見えない。かつて代表選の時に「私はバリバリの保守」を自任していた言葉の虚しさを覚えるのはともかく、政局や政争に目が眩んでしまう余り、国政と都政の区別がついていないのではないか。

これだから安倍さんに軽口を叩かれる

野党第1党首が「無能」なら、政権側も緊張感を失っても当然だ。右派的なネット民からは以下の報道に批判もあったが、安倍首相がこんな軽口を叩いてしまうのは、やはり「野党が最弱」と認定していて心底バカにしているからにほかならない。

安倍首相「山口の物産がない…忖度していただきたい」:朝日新聞デジタル

これに対する野党議員の批判の声がわずかに報道されているが、極めて散発的で世論がちっとも盛り上がらないのは、やはり民進党への信頼感、求心力があまりにもないからだ。これでは有力議員が愛想をつかすのも当然だ。長島氏は去ってしまったが、細野氏は代表代行を辞任して見放した(細野氏は蓮舫氏を代表選で担いだ責任論は残るが)。しかし、民進党が嫌いな国民にとっても、野党が弱すぎて与党の政権運営に緊張感が欠けてしまうのは不幸だとしかいいようがない。

人材マネジメントに詳しい人にはおなじみだが、その昔、プロイセンの軍人が、幹部クラスを4種類に分ける考えを持っていたとされる(「ゼークトの4分類」として知られるが、これはちょっと誤解だそうで別の軍人が言ったようだ)。

  • 有能な怠け者。これは前線指揮官に向いている。
  • 有能な働き者。これは参謀に向いている。
  • 無能な怠け者。これは総司令官または連絡将校に向いている
  • 無能な働き者。これは処刑するしかない。

もちろん、これらは過激なたとえだが、④は、たしかに無能な指揮官がいつまでも立ち回れば、いたずらに死傷者を増やし、戦局を悪化させるというのは子どもでも分かる。企業マネジメントにおきかえれば、能力がない人材をいつまでも幹部に据えていると、プロジェクトは成果を生み出せず、部下は疲弊し、やがて組織全体が崩壊する。だからこの分類は、能力の問題がわかったら、すみやかに役職交代をさせないとならない、ということを戒めたわけだ。

無能な働き者が総司令官でいいのか

蓮舫氏はなまじっか声は大きく、発信力は高い。怠け者というよりは働き者だ。「有能な働き者」であれば、“総司令官になってしまった参謀”としてまだマシだが、残念ながら代表選の二重国籍問題への対応に始まり、森友問題でも国民的共感を呼べず、支持率がむしろ低迷という経緯を振り返ると、やはり「無能な働き者」だとしか思えない。

敵軍の総司令部である官邸は笑いがとまらないだろう。むしろ引き摺り下ろすより、無能な指揮官にとどまってもらったほうが勝手に失策を重ねてくれる。

であれば、民進党としては自浄作用、つまり無能な働き者は早く自分たちで引き摺り下ろすしかない。そういえば、きのうは、岸本周平氏らが野田幹事長に党改革を求める動きを見せたようだ。

民進若手議員有志、両院議員懇談会開催を野田佳彦幹事長に要求 – 産経ニュース

ただ、こうした動きはまだ局所的で弱い。指揮官が無能な働き者では、都議選も衆院選も前線では犠牲者を無駄に増やすだけだ。捲土重来を期してアベノミクスの対案となる経済政策を模索しているという前原氏をはじめ、早くクーデターを起こすしかないのではないか。

蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた? - 初の女性首相候補、ネット世論で分かれた明暗 - (ワニブックスPLUS新書)
新田 哲史
ワニブックス
2016-12-08

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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