政権発足100日「トランプ馴れ」した米国(特別寄稿)

渡瀬 裕哉

本エントリーは、「トランプ政権発足100日」に際した渡瀬裕哉さんのオリジナル寄稿です。

もう馴れたかな?(Gage Skidmore/flickrより:編集部)

政権発足100日間で「トランプ馴れ」が生まれつつある

トランプ政権発足から100日間、米国では「トランプ馴れ」とも言うべき現象が発生しています。米国紙ではトランプ政権が100日間で実現したこと・実現できなかったことなどが並べられており、その政権発足のスタートダッシュに関する論評が掲載されました。また、筆者の知人である米国の共和党関係者らもトランプ政権に対する所作にある種余裕を感じるようになりました。

大統領選挙時から続いたトランプ氏に対するバッシング、そして政権発足後からのリベラル系メディアのヒステリックな反応などにも、多くの米国民はそれらにすっかりと慣れてしまったようであり、トランプ政権にできること・できないことなどが徐々に明確になることで、すっかり落ち着きを取り戻しています。

特に金融市場などはトランプ政権の経済政策に関する意欲・能力を織り込み済のような反応を示しており、政策立案力・議会対策能力も含めて冷静な分析が行われていることが示唆されます。

ト最初に派手な言動を行ったとしても、最終的には妥当な落としどころにまとめようとするトランプ政権の性格に対し、多くの米国民が既に「トランプ馴れ」してしまったため、過剰な反応や期待が無くなって正味の政権運営能力に注視するようになったと言えるでしょう。

相変わらずヒステリックな反応を示し続ける日本メディア・危機を扇動する有識者

一方、日本においては北朝鮮問題をはじめとして、相変わらずトランプ政権の動向に対してヒステリックな反応をメディアが示し続けています。本屋をのぞいてみても陰謀論に近いような面白おかしいトランプ本やリベラル有識者らによる偏見をまとめた本が堂々とメインコーナーに並べられています。

日米の認識ギャップは極めて深刻であり、当の米国民が「トランプ馴れ」してきているにも関わらず、依然としてわが国ではトランプを「予測不可能」と評する論評が幅を利かせている状況です。

トランプ政権は任命人事、大統領令・大統領覚書、外遊日程、議会バランスなどのオープンソースの情報などを組み合わせると、かなり精度の高い分析を実施することが可能である、予測可能性は一定以上ある政権です。

仮に予測可能性を下げる要素があるとしたら、それはトランプ政権自体に要因があるのではなく、連邦議会や諸外国側とのパワーバランスの変化によってもたらされるものだと言えます。

日本人もそろそろ「トランプ恐怖症」を克服し、トランプ政権に「馴れる」ことが必要な時期になったものと思われます。

オープンソースの積み重ねによる冷静なトランプ政権分析の必要性

主要紙では「ワシントンの友人」(往々にしてリベラル識者)からの伝聞でトランプ政権を論評するやり方がいまだに通用している有り様ですが、トランプ政権の動向を掴むためには、私たちはそのような段階から卒業してトランプ政権の動きをつぶさに解析することが必要です。

そのためには、日系メディアで流れてくる情報を鵜呑みにするのではなく、広く公開されているオープンソースを丁寧に積み上げて分析をしていく当たり前の姿勢を取り戻すべきです。たとえば、ホワイトハウスのHPは毎日更新されていますが、同情報を丹念に追うだけでも相当の情報量を蓄積することが可能です。

また、共和党系のシンクタンクのレポートなどの情報を丹念に読み解く、または政権関係者や連邦議員らの発言を整理していくことによって、トランプ政権の動向に関するおおよその予測を立てていくことができ、仮に予測を外したとしても原因究明によってより精度の高い分析を行うための能力向上に繋がります。

トランプ政権発足から100日間を経て、日本でも「トランプに馴れる」ことで落ち着きを取り戻した議論が主流となっていくことに期待しています。

本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などは[email protected]までお願いします。

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