知財本部・新情報財委員会。AIやデータ等に関する知財戦略をとりまとめました。
<<新たな情報財の創出に対応した知財システムの構築>> (人工知能によって自律的に生成される創作物・3Dデータ・ビッグデータ時代のデータベース等に対応した知財システムの検討) という知財計画2016を受けてのものです。
「データを利活用したビジネスモデルやデータ流通基盤が十分に確立されていないことや、不正利用された場合の対応に関する懸念や不安などを背景に、必ずしも十分なデータ利活用がなされているとは言えない。」というのが背景の認識。
現行制度上、データは、営業秘密として秘匿する以外には、逆に無制限・無条件で利活用させるしか選択肢がなく、一定の条件で広く利活用が進むことを支援するような法的な枠組みもない。オープンイノベーションが阻害されている可能性があります。
検討の結果、3点について具体的に進めることとなりました。
1) データ利用に関する契約の支援:契約ガイドラインの策定等
2) データ流通基盤の構築 :データ取引市場などのデータ流通基盤の中で、利用や利益分配等のルール化
3) 公正な競争秩序の確保 :新たな不正競争行為の対象となるデータや行為について検討
また、利活用促進のための「権利」についても、必要かどうかを含め引き続き検討することとしました。
AIについても検討を進めました。機械学習を用いたAIの生成過程の要素(学習用データ、学習済みモデル、AI生成物)について、学習用データの作成に支障があるとの指摘や、多大な投資等を行う必要がある学習済みモデル等の現行知財制度上の保護が不十分との指摘もあったためです。
具体的に検討を進めるものとして、学習用データの作成の促進に関する環境整備(著作権法の権利制限規定に関する制度設計や運用の中で)、学習済みモデルの適切な保護と利活用促進(まずは契約による適切な保護について)といった事項が挙がりました。
AIのプログラムは、当面、現行法とは異なる権利を付与する等は行わず、引き続き技術の変化や利活用状況を注視していくこととしました。AI生成物に関しても具体的な事例に即して引き続き検討することとしました。
これを親会に上げ、政府・知財計画2017に反映させていく運びとなります。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年5月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。