子どもをイジメから守るにはどうすればいいの?

写真は風路氏。ブログより。

「小学校入学」。親にとっては、わが子の成長に対するうれしさと期待感でいっぱいになる瞬間である。一方で、「どんな小学校生活を送るのか?」「授業にちゃんとついていけるのか?」「担任の先生ってどんな人?」といった不安のタネがつきない。

わが子が「お友達」関係で悩まない本 』(フォレスト出版) の著者である、風路京輝(以下、風路氏)は、38年のキャリアをもつ元・小学校教師である。退職後は、小学生の子どもを持つ親の疑問や不安などに答える「子育て支援」を行っている。今回は、「イジメ問題」について話を伺った。

「イジメの本質を理解する」ことが大切である

――風路氏は「イジメ問題」はデリケートな問題であること。そのため早期に対処する必要がありイジメの本質についても理解すべきと答える。

「みんなに『嫌われがちな子』にはタイプがあります。例えば、クラスの中には、お友達として好かれる子もいれば、みんなに嫌われがちな子がいます。これには、清潔感などの外見面は関係ありません。多くの子どもを見てきて、嫌われがちな子には“ある共通する特徴”があることがわかりました。」(風路氏)

「ガキ大将である『ジャイアン』タイプのわかりやすい意地悪ではありません。相手が悲しい(嫌がる)気持ちになるようなことを、陰で言ったりやったりすることです。」(同)

――学年があがり高学年になるほど、口には出さないものの、「あの子は嫌い」と思われている場合が少なくないようだ。

「いまの小学生は、LINEやFacebookをやる子どもがいますが、SNSを持たない子どもたちもいます。そのような子どもたちは何人かでノートを回し、いろいろなことを書いていく交換日記をやっています。毎日顔を合わせていても、休み時間や学校の帰り道だけでは十分ではなく、話したい内容がたくさんあるのだと思います。」(風路氏)

「交換日記に良し悪しはありませんが、ただ、そのノートの中でのやりとりで、感情的な行き違いが生じるケースが見受けられます。批判めいた文句を言ってみたり、自分が優位に立つような言動をしてみたり、些細なことで亀裂が生じてしまうのです。」(同)

――このような子どもは、家庭に屈折した感情を生む要素があることが否定できない。教師としては細心の注意を配らなければいけない。

同じ言動でも男子と女子で差が生じるということ

「同じ言動でも、受け入れられたり嫌われたりすることがあります。低学年では何でも仕切りたがる女の子は、嫌がられる傾向があります。ところが、男の子の場合は同じようにやっても、嫌われる傾向は見られません。」(風路氏)

「例えば、学校の掃除であれこれ指示をする女の子に反発していた子どもが、同じようなことを話している男の子の意見は受けいれて、結構言うことを聞くのです。」(同)

――これは、セクシャリティーとジェンダーという両面から見るとわかりやすい。

「男の子は、乗り物などの動くものに関心が向き、体を動かすことも好きですが、女の子に比べて言語機能の発達がゆっくりで、しゃべる時期が遅い傾向があるともいわれています。一方、女の子の場合、単語を覚え、言葉を口にする時期も、男の子と比較すると早い傾向にあると言われています。」(風路氏)

「身の回りのことや母親がやっていること、人とのかかわりにも早く興味を持ちます。精神的な発達も男の子より早いため、『おませだ』『口が達者だ』とか言われるのがこのタイプです。」(同)

――さらに、昔といまの「イジメ」の違いについても理解することも大切だ。

「ガキ大将のイジメや単発なイジメの場合、特定の子が追い詰められて自殺まで考えるようなケースは、今に比べて多くはなかったように思います。イジメられやすい子の特徴というより、『ジャイアン』に代表されるように、イジメをしやすい子の特徴のほうがわかりやすかった時代がありました。」(風路氏)

「いまのイジメは、普通の子がまわりを巻き込みながら、特定の子をイジメるケースが増えています。昔は基本的に顔を合わせていないとコミュニケーションがとれなかったので、子どもたちの言動は第三者の目が届く範囲にとどまってしました。」(同)

コミュニケーションの変化は何を及ぼすか

――コミュニケーションに変化は、子どもにどのような影響を与えるのだろうか。

「ネットやSNSの影響でコミュニケーションが表に出ないため、まわりが気づきにくくなりました。子どもたちの人間関係が学校にいる時間だけでなく、帰宅してからも『つながってしまう』『家にいてもつながる』という影響もあると思います。環境に変化が生じて、イジメの形態も変化したことを理解しなければいけません。」(風路氏)

――子どもを見守り、楽しい学校生活が送れる環境をつくるには、環境の変化について理解することが大切だ。それには、学校と家庭の双方でコミュニケーションの質を高める必要がある。間違っても「モンスターペアレンツ」にはならないように、ご注意いただきたい。

参考書籍
わが子が「お友達」関係で悩まない本 』(フォレスト出版)

尾藤克之
コラムニスト

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