知財本部・新情報財委員会「おわりに」

知財本部・新情報財委員会。報告書の「おわりに」にも強いメッセージを寄せました。ポイントをピックアップします。

1 データ・AIの利活用促進の基盤となる知財システムとして、著作権等の対象とならない価値あるデータの利活用促進のための知財制度、AIの学習用データの作成の促進に関する環境整備、AIの学習済みモデルの適切な保護、AI生成物の知財制度上の在り方について課題と方向性の整理を行った。

2 本報告書で示した方向性を具体化するためには、検討結果を踏まえ、関係機関において、産業の実態などの把握を更に進めつつ、検討を深め、適切な措置を早期かつ確実に 実施することが求められる。
※議論からアクションへ。

3 諸外国の検討状況等を注視しつつ国際的なハーモナイゼイションを取るべく我が国から積極的に発信・提言するなど国際的な議論を惹起することも含めて、 更なる措置を行う必要があるか検討することが求められる。
※この検討は世界に先駆けての取組であり、また、その内容は一国で完結するものではない。日本から海外に発信することが重要です。

4 現時点においては、著作権等の対象でないデータに権利付与をせずとも流通・利活用が進んでいくのか、多大な資金と労力を投じた学習済みモデルや人間の創作的な寄与が少ないAI生成物を保護する新たな仕組みがなくても作成や利活用を促進するうえで支障が生じないかなどを見通すことは困難。
※これは正直な心情。来年になれば、前提が変わっていることも考えられます。

5 「デジタル時代において保護すべき創作性とは何か」、「企業間の業界の垣根を越えた連携・協働やオープンイノベーションを前提とした知財制度はどうあるべきか」などといった根本にも立ち返りつつ、必要であれば、時代に即して、法体系を見直していくことも求められる。
※法律を見直す、だけでなく、法「体系」を見直す、としています。著作権法、特許法、不正競争防止法などの体系を見直す時期が迫っているのかもしれません。

6 ここ十数年のデジタル・ネットワークに対応したイノベーションが海外主導で進んできたことを念頭におき、・・データ・AIの利活用によって新たな付加価値と生活の質の向上がもたされる環境を我が国が世界に先駆けて実現するにはどうすれば良いのか・・不断に議論を行っていくことが必要。
※委員会で辛口のコメントを発し続けた東大・喜連川教授は、最後にこうした「場」が重要とおっしゃいました。アクションが重要ですが、不断の議論もまた大切。

7 本報告書に示した方向性が政策として実現することにより、データ・AIの利活用促進による産業競争力強化が図られることを期待しつつ、技術動向等を踏まえ、データ・ AIの利活用促進に向けた知財システムを含む議論が継続されることを期待するものである。
※委員のみなさま、政府関係者のみなさま、おつかれさまでした。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年5月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。