豊洲移転は大幅な黒字である

2017年06月07日 15:14

東京都の豊洲移転についての「市場問題プロジェクトチーム第一次報告書(案)」を読むのに1日かかった。153ページもあるだけでなく、論旨が混乱して意味不明だからだ。この原因は、小島敏郎座長が豊洲移転を否定する論拠を集めて「築地再整備」に誘導しようとしているためだと思われる。

当初の争点だった土壌汚染については豊洲の安全性に問題がないことを認め、話を「安心」にすりかえているが、メインの論点は経済性だ。東京都の従来の計算では、市場会計の収支は71ページの図のようにほぼ均衡の見通しだが、小島PTは減価償却込みで毎年140~150億円の赤字が出るという。


これは誤りである。採算を考えるときはキャッシュフローをみるので、減価償却は考えてはいけない。減価償却は建設費を会計上分割して計上するだけで、実際にはすでに発生したサンクコストなので、建設費と減価償却はダブルカウントになる。「建替財源」は減価償却とは関係ない。

減価償却を除くと豊洲の赤字は毎年21億円だから、これが50年続くとしても1050億円。築地の跡地を売却して得られる4386億円から差し引くと、キャッシュフローは3000億円以上の黒字だ。このように低利用の土地を高度利用する原資に土地の売却益を使うのは、都市再開発の普通の手法である。

ところが小島PTは、それを必死にごまかす。まず「4386億円の売却益は過大計上だ」という。では正しい計算ではいくらなのかと読むと、どこにも書いてない。それは「市場会計とは全くリンクしていない」ので考えないという。つまり築地の売却益はゼロと仮定して、豊洲移転は赤字だというのだ。

この根拠として報告書は「神田市場が3700億円で売れる予定だったのに400億円だった」ことをあげるが、神田市場は1.5ヘクタールだったのに対して、築地は23ヘクタール。すべて売却するわけではないが、単純に面積に比例配分しても6100億円で売れる計算だから、5000億円以上の黒字だ。

では築地再整備はどうか。こっちは工期3年半~15年で、事業費は800~1388億円。ところが「営業損益は毎年15~20億円の黒字」だという。ここでは建設費は毎年の減価償却費として計上しているが、小島PTの方式で豊洲の減価償却150億円をダブルカウントすると、市場会計では築地再整備は100億円以上の赤字になる。

豊洲の建物は150億円かけて解体(!)して更地にし、民間に売却すると収益(3200~4370億円)があがるという(築地再整備の採算には入っていない)。それならなぜ築地の売却価格を計算しないのか、不可解だ。

最大の問題は、築地再整備が30年以上前から何度も計画されては挫折したことだが、報告書は「食のテーマパーク」などの夢を描いて、今度はできるという。しかし今から最大15年もかかって工事する間、卸売業者はどうするのだろうか。その間の機会費用(業者の逸失利益)は、まったく考えていない。

どう計算しても、豊洲に移転して築地を売却するプロジェクトのキャッシュフローは大幅な黒字である。これに対して今から、できるかどうかもわからない築地再整備をしても、15年後に完成したころには、魚の卸売りというビジネスが消滅しているだろう。公設の魚市場という制度に意味があるのか、という小島PTの指摘は正しいが、それなら豊洲も築地も民間に売却し、卸売市場を完全民営化するしかない。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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