知財本部コンテンツ会議。
1)映画振興、2)デジタルアーカイブ連携、3)模倣品・海賊版対策、4)海外展開促進、5)産業基盤強化。これらテーマについて、方向性を整理しました。
1)映画振興検討会議はこれまで報告のとおり、1)製作支援・資金調達、2)海外展開、3)ロケ支援の3本柱。クールジャパン人材育成検討、海外展開の資金調達方法の検証、ロケ撮影官民連絡会議などにつなげていきます。
迫本委員が映画の国家戦略上の位置づけを初めて整理したと評価する一方、相澤委員は政投銀などが大ロットで投資するような環境が必要と指摘。川上委員は、日本コンテンツは個人依存であり、先端の開発手法を取り入れるのが不得手と指摘しました。コンテンツの「研究開発」が次のテーマになりそうです。
2)デジタルアーカイブ連携は関係省庁等連絡会・実務者協議会を開いて検討。博物館、図書館、研究機関、企業・官公庁など各アーカイブ機関のメタデータ等を整備、オープン化して共有するためのガイドラインを作成してもらいました。
瀬尾委員がアーカイブの社会的な効能やインフラ性を示し、推進目的を明確化すべきと指摘する一方、野坂委員は個別のアーカイブよりも、横断・つなぎの役割が大事と指摘しました。井内局長は供給サイドから需要サイドに視座をシフトさせることを表明しました。
喜連川委員は、オープンデータのアーカイブが必要であり、特に研究データのボリュームが大きいことを指摘しました。そしてこれを維持するビジネスモデルをどう作るかという問題を提起しました。
3)模倣品・海賊版対策。ネット被害は2012年に急増し増加傾向。CODAによると、2014年度の映画・アニメ・放送・音楽・マンガの海外収入1234億円に対し、海賊版の被害額は2888億円。文化審議会でリーチサイト対策、経産省でオンライン広告対策、総務省で放送コンテンツ流通対策等を検討中。
中国対策として、経産省を主体とした官民合同協議、日中警察協議、日中著作権協議など各省庁で中国政府に働きかけているが、ハイレベルでの政府間協議と並び、関係省庁・機関がヨコ連携する対応が必要。
これは是非アウトプットを出したいです。
経産省の海賊版対策としては、CODA(コンテンツ海外流通促進機構)を通じ、中国の主要な動画投稿サイトとの間でネット上の著作権保護の覚書を締結。CODAの削除要請に対してはほぼ100%の削除実施に成功しているとのこと。
これに対し野間委員は、いたちごっこであり対応コストが大きいことを強調。野坂委員はスピードの向上を訴えました。伊丹委員は利用マインドの醸成を、竹宮委員はユーザ教育対策を唱えました。
川上委員は「サイトブロッキング」が有効としつつ、日本人が海外経由で違法DLすることが深刻であり、若い世代の間にコンテンツにカネを払わない文化が培われることが問題と指摘しました。
斎藤委員は、音楽の被害は国内で起きていると呼応し、サイトブロッキングなど踏み込んだ手段が必要であり、さもないと海外進出エネルギーも削がれると指摘。相澤委員は域外適用、通商交渉、企業広告CSR、資金決済等の対応策を示唆しました。
4)海外展開促進対策としては、J-LOP事業により、5623件が採択され、海外売上は1918億円増加したとのこと。総務省は海外展開促進策の補正予算で、事業費8.4億円で、85.7億円の経済波及効果があったとのことです。
5)著作権制度の対策として、文化審議会の法制・基本問題小委が中間とりまとめ。
柔軟な權利制限規定、教育情報化の推進等に方向付けを行いました。ぼくはこちらの小委にも参加していましたが、問題は、文科省が著作権改正法案を国会に提出できるかどうか、です。がんばって。
喜連川委員は、「オボカタ問題をクリアする」「子どもが病気でも勉強できる」という分かりやすい問題設定が大事だと指摘したうえで、著作権制度改正によってこれらに取り組んでいる政府の姿勢を評価しました。
今回のまとめとして、1)2)は国家戦略上の位置づけの明確化と研究開発やビジネスモデルの重要性、3)スピードアップと対策の強化、4)5)法整備を含むアクションの必要性が指摘されたので、それらを知財計画2017に反映させるべく整理する、としました。
なお、事務局が準備する現案にはコンテンツに関するさまざまな固有名詞が登場しています。政府・知財計画は関係省庁の調整・同意のもと政権として発するものであり、その調整は毎年、歯列を極めるのですが、今回、「君の名は。」の名前を書き残すのは当然として、「ピコ太郎」が残せるかどうかがポイントかと存じます。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年6月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。