「湿邪」について

数日前のこと、6月8日のyahooニュースに

「体のだるさや頭痛、むくみ… 梅雨が原因の体調不良「湿邪」とは」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170608-00010002-abema-soci

がアップされていた。梅雨時分のいま、まったく気の利いた配信だった。

この湿邪(シツジャ)という状態は、目立った熱が出ることもなく、咳をするわけでもなく、お腹をこわすほどにもならず、痛みといったものもまずないので見過ごされやすい。しかしただの疲れだけでないことはわかる。それだけに悩ましい。万病の元と言っては大げさだが、風邪と同じように生活も気分も乱してしまう。

しかし湿邪という概念とその内容を知っていれば、早目に手が打てるし、予防線も張れるというものだ。

ただ記事にあった、

梅雨のジメジメは私たちの体調にも影響を与える。その影響は東洋医学で湿邪(しつじゃ)と呼ばれている。東洋医学に詳しい千代田漢方内科クリニックの信川益明先生は、「湿邪とは、体の余分な水分によって体の不調が生じる症状。人が長時間湿度の高いところにいると発汗作用がうまくいかず、冷えという症状が起こることが考えられている」と説明する。

といった説明は、防御するにはちょっと不十分かもしれない。わたしが湿邪という言葉を知ったのは40年ほど昔のことで、東洋医学を含む「透派の五術」を日本に伝えた(故)佐藤六龍氏の著書を読んでいた時のことだった。その内容とその後の私見を加えていうと、「梅雨のジメジメ」が「体調にも影響を与える」というよりは、

「汗をかいた後、(周囲の温度変化、冷房などによって)その蒸発に手間取ると、体表面の温度が過度に下がり、汗腺が締まったままになることがある。すると以後の発汗を必要以上に抑制してしまう状況が生ずる」

という方が、よりわかりやすいだろうと思う。「湿邪」の主体は、梅雨時のジメジメではなくて、皮膚の方なのだ。

そして汗腺が締まった状態にもいくつかの分類が可能だと思う。まず単純に体が冷えて一時的にそうなった場合。わたしなら、からだをすこし温めてやる。また若干余分の水分とミネラルを摂取して発汗を促す。これでだいたいからだも軽くなる。

しかし本当に皮膚が疲労していて汗腺が働かない場合もある。日焼けで皮膚が傷んだ時にも似たことが起こるのだが、むくみも出る。皮膚にとどまらず、からだそのものが疲労している場合もあるだろう。風邪とおなじように栄養と休養をとるほかない。こういった状況で周囲の温度が上がったり、運動したりすると、逆に軽度の熱中症にもなりかねない。東洋医学的な解決ではなくて、医療機関での受診が必要かもしれない。

また検索をかけて見ると、tenki.jpにも湿邪の記事があった。(2015年7月8日)

梅雨の「湿邪」。体がだるくて重いのは、湿気が溜まっているせいかもしれません
http://www.tenki.jp/suppl/usagida/2015/07/08/4491.html

水は人間になくてはならないものですが、湿度の高すぎるところに長時間いると発汗がうまくおこなわれず、余分な水分が排出できなくなってしまいます。東洋医学では、『湿邪(水の邪気)』が体内のいろいろな場所に溜まって「冷え」を起こすと考えられています。冷えると、血液の循環が滞って代謝が悪くなり、 汗や尿で水分をしっかり排出できません。むくみも起こりやすくなるのですね。

夏でもシャワーですませないで湯船に浸かるのがお勧めです。ぬるめの半身浴はリラックス効果で自律神経を整え、ストレスや痛みを軽減します。

こちらの記事の方が、先日yahooが採用した記事よりも詳細だと思うが、わたしも半身浴はよく試みる。とくに上半身を濡らさずに湯船に入ると効果的だと思う。というのも、上半身が濡れていると、発汗がなかなかはじまらず、疲れが抜けにくいからである。下半身で温められた血液が上半身に伝わり、血行のよくなった皮膚が発汗をはじめると、それまでのからだや気分の重さが、ウソのように感じられるものだ。

2017/06/11 若井 朝彦
「湿邪」について

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