北大使館の祝賀会の「ブッフェの話」

2017年07月10日 11:30

駐オーストリアの北朝鮮大使館(金光燮大使)では年数回、ゲストを招いて歓迎会、祝賀会が行われる。当方は25年前頃、数回、その招きを受けたことがあったが、「北朝鮮を批判するジャーナリスト」のリストに入って以来、招待状は届かなくなり、ご無沙汰している。以下の情報は北大使館に毎回、招かれる知人から最近聞いた話だ。

▲駐オーストリアの金光燮・北朝鮮大使(中央)=2015年12月に開催された国連工業開発機関(UNIDO)総会で撮影

▲駐オーストリアの金光燮・北朝鮮大使(中央)=2015年12月に開催された国連工業開発機関(UNIDO)総会で撮影

「君、北朝鮮の大使館のブッフェが良くなったよ。ワインも出てくるうえ、美しい北の女性たちがワインを注いでくれる。とにかくゲストサービスは考えられないほど良くなったよ」という。

知人の話が事実ならば、確かに変わった。北朝鮮の故金日成主席の誕生日や建国記念日にはゲストが招待されるが、大使館主催の歓迎会や夕食会に慣れているゲストたちが異口同音にいうことは、「北の大使館のブッフェは余りにも質素で貧弱だ。食欲をそそるようなものはまったくない」というものだ。

当方の昔の記憶でもそうだった。当方は中東や東欧の大使館から招かれることがあるが、食卓のメニューは豪華だ。ゲストの食欲をそそる。ワインのサービスは当然だ。OPEC(石油輸出国機構)主催の歓迎会はその中でも最高だ。オイルダラーの恩恵もあって資金は十分だから、ウィ―ンの五つ星ホテルで歓迎会が開催されたりした。その贅沢な接待を体験している者からみると、北の大使館の接待は貧弱だ。
もちろん、ゲストの狙いはブッフェではないが、それにしても、簡素な接待はゲスト離れの原因となっている。北大使館主催の歓迎会や祝賀会は年々、ゲストが少なくなっているのだ。

その北大使館の接待が突然、質的向上を成し遂げたという。知人にしつこく、「君、その情報は間違いないだろうね」と聞くと、知人は笑いながら「自分も少し驚いているよ。本当に、北のブッフェの内容は飛躍的に改善されたよ」と繰り返す。

北朝鮮は核・ミサイル開発を継続し、朝鮮半島の緊張を高めている。それに対し、国際社会は対北制裁を施行中だ。贅沢品の対北輸出は久しく停止され、日常品、食糧不足は慢性化している。海外の北公館への資金も途絶えてきたと聞いている。北大使館は生きていくためにさまざまな不法な経済活動に腐心している。だから、北大使館主催のゲストを招いた歓迎会のブッフェの種類、その質が他国のそれと比べると落ちるのはやむ得ない、と当方を含むゲストたちは一応、理解を示してきたはずだ。

それが突然、食卓の上の皿数が増え、ワインまで出てくるというのだ。何が生じたのだろうか。「他国から笑われないブッフェ水準を維持せよ」と平壌から指令が届いたのだろうか。

30代の若い金正恩氏(労働党委員長)はスイス時代に欧米生活を体験している。欧米大使館のブッフェの水準を知っているはずだ。何事にも負けることが大嫌いな金正恩氏のことだ、「外部のゲストを招いた歓迎会には国の威信をかけて豪華に振舞え」といった命令が飛び出したとしても不思議ではない。

ひょっとしたら、金大使がカジノで大当たりしたのかもしれない。ブッフェの資金源がそことすれば、豪華なブッフェが今後も続く保証はないだろう。

知人は、「9月の建国記念日にも行くよ。楽しみにして」という。そうだろう、豪華なブッフェが待っているのだ。ウィ―ン14区の北大使館にはゲストが戻ってきて、活気を取り戻すかもしれない。

知人の話を聞きながら、招かれない人間のひがみかもしれないが、「国連の対北制裁は何も効果をもたらしていない」といった怒りが突然、湧いてきた。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年7月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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