無痛分娩自体が悪いわけではない 安全体制の問題だ

常見 陽平

というわけで43歳にして娘が誕生した。嬉しい。ちゃんと仕事しなくちゃな、と父としての自覚も湧いてきたような。とはいえ、ちゃんと仕事するということは、自分に期待されていることをやるということなのだけど。

5年にわたる不妊治療の末、私43歳、妻42歳でやっと授かった。高齢出産だったこともあり、無痛分娩だった。病院での説明会にはもちろん、私も参加した。

ちょうど、出産前に無痛分娩の事故のニュースがたくさん出ており。ある日も妻は、病院で昼寝をしていると死産の夢をみて。はっと思い、スマホを手にとったら、ヤフトピが無痛分娩だったとか。そりゃ、怖くもなる。実際、生きるか死ぬかの難産だったのだが。

今日も産経新聞に無痛分娩の記事が出ていた。

麻酔使う無痛分娩「安全体制を」日本産婦人科医会が初の提言へ 相次ぐ死亡・重度障害事例(産経新聞)

他にも、ここ数日、全国紙各紙が無痛分娩の事故について取り上げていた。

この件、高齢出産に取り組んでいる夫婦の気持ちを忖度し、冷静な議論を期待したい。そして、印象操作は辞めて頂きたい。一物書きとしても、40代で父親となった者としてもお願いしたい。

まあ、この記事もタイトルは過剰に煽っているわけではなく、中身は安全体制のことを言っている。ただ、この手の記事が拡散すると、見出しだけで無痛分娩というメソッドが悪いかのような印象操作になってしまう。問題は「運用」であることが明らかだ。つまり、体制が整っていないし、まだまだこれからということなのだ。

相次ぐ死亡・重度障害事例というタイトルだが、記事を読むと大阪、兵庫、京都の4カ所の医療機関で、妊産婦の死亡など少なくとも5件の重大事例が起きていることが記されている。「相次ぐ」も「重大事例」も間違いではないし、人の命や人生は大切であることは言うまでもないが、やや煽り気味ではないか。

お世話になった産院でも、無痛分娩を始めたのはこの1年くらいだという。産院で聞いた説明で「なるほど」と思ったのは、要するにまだまだ日本ではこの方法がまだまだ浸透していないわけで。また、麻酔医などを同じ病院から手配しないといけないということもあり、その人が上手いとは限らないわけで。私たちがお世話になった産院では、上手い人を外から手配する、さらには、無痛分娩と言いつつ、いきなり麻酔は入れず、必要最小限にするというやり方だった。

不妊治療も、無痛分娩も、子供が欲しい家族、40代で出産する家族には希望なのだ。。というわけで、この問題についてメディアが問題提起するのはOKなのだが、無痛分娩=悪という印象操作は辞めて頂きたいのだ。

安心して働き、子供を産み、育てることができる世の中にするためにも、運用方法を批判するのはいいが、無痛分娩というメソッド自体を悪者にしてはいけないのだ。


・・・ミルク代、おむつ代のためにも、最新作、よろしくね。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2017年7月10日の記事を転載させていただきました。お子様のお誕生、おめでとうございます!オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。