カジノで依存症者がでることを認めた上で対策を!

2017年08月01日 13:00

第1回の会合には安倍首相も出席した「特定複合観光施設区域整備推進本部」(首相官邸サイトより:編集部)

IR実施法が秋の臨時国会で提出されることが予想されますが、それに先駆けて行われていた「特定複合観光施設区域整備推進会議」で制度概要がまとまりました。

ここでカジノにおけるギャンブル依存症対策が話し合われたのですが、IR法案によって日本のギャンブル依存症対策が大きく進むと思っていたのに、正直がっかり、落胆しかありません。

P55に「世界最高水準の規制:弊害防止対策」と銘打ち、大々的なキャッチコピーをつけておられますが、中味はそのコピーに見合っておりません。

まずこのP55から書かれている依存症対策と掲げられているものは、つまりは「依存症抑止策」のみなのです。しかしながら依存症抑止策は「やらないよりはやった方が良い」ことは間違いないですが、それで「依存症は発症しない」なんてことは全くありません。

回数制限、年齢制限、自己申告、家族申告による入場制限などなど、どんなに入口の水際対策を強化しようとも依存症者は必ず出ます。

これまでの公営ギャンブルは、全く何も入場制限等をしてきていませんが、それよりもなにもココまで日本にギャンブル依存症が蔓延したのは、「ギャンブル場ができれば、ギャンブル依存症者がでるのだ!」ということを、正面から認められなかったことにあります。

「健全経営をしているから、皆、健全なギャンブルを心がけており、依存症者などいない。」
IR議論まで公営ギャンブルは、こう主張し続けてきました。

ですからIRでは依存症者がでることを正面から認めたうえで、骨太の対策が考えられる、起爆剤となることを期待していました。これまでのタブーを打ち破り、他のギャンブル産業の依存症対策をけん引して欲しいと願っていました。

でもまたしても、入場規制を厳格にすれば、依存症者は出ないというスタンス。

そんなことあるわけないじゃないですか。
入場規制に引っ掛からずに依存症を発症する人などいくらでもいると思いますが、たとえ、なんらかの入場規制にひっかかり日本のカジノに入場できなくなった・・・としても、日本には闇カジノやインカジもあるし、オンラインカジノも認められていないけれど現存しています。カジノの面白さを覚えた人達が、そちらに移行することは十分考えられます。

またそのような違法カジノでなくても、韓国やマカオに行けばいくらでもカジノはあります。今でも海外カジノに入り浸り、困っているご家族から相談がきています。
そしてカジノ以外のギャンブルは、日本にはいくらでもあるのです。

「入場規制をすればやめるはず」なんて対策は甘いも甘い大甘で、ギャンブル依存症者のギャンブルに対する強迫観念が分かっていません。

ですから大切なのは、依存症になってしまった人達を、いかに早期発見、早期介入、早期治療と繋げていき、再発防止策と社会復帰支援を骨太なものにしていくか、ギャンブル依存症対策はここがキモなのです。

そして、それをやるには、地域連携を育てていくことが重要で、ワンストップ型の支援では行き届きません。何故なら、依存症者は全国に散らばり、地元で生活しているからです。

ところがそのことを推進会議を仕切っている方々が理解していません。また、国はそういう時間がかかることを掲げるより、手っ取り早く、面倒くさくないものしかやろうとしていません。

さらに問題だと思うのは、P72あたりから書かれていますが、カジノを開設したら、その売り上げから国が納付金を吸い上げ、カジノ開設を認定された地方自治体と折半し、その使途は「幅広く公益に用いることと」としていることです。

これはまるで今の公営ギャンブルの仕組みと同じようじゃないですか。
「ギャンブル依存症対策費」が担保されていないのです。

確かに、諸外国でも納付金を徴収して、そのお金を広く公益に使っています。
でもそのうちの何%かは「ギャンブル依存症対策費に使う」と決められています。
それでなければですよ、例えば「ポスター作った」「電話相談やってます」などという言い訳程度の対策だって「ギャンブル依存症対策やってます」と言えてしまいます。

また、ギャンブル依存症からの回復には、サポートしてくれる人達の養成、そして雇用主他社会の理解と協力、民間回復施設への助成や、なんといっても巻き込まれ深刻な状況になっている、家族たちを救い出すことを考えなくてはなりません。

特にギャンブル依存症者を親に持つ子供たちの、貧困や虐待の問題に取り組むことは早急な課題です。それにはお金がかかります。対策費の拠出は不可欠です。

それでなければ、何の支援も受けられず、行政、警察、精神科医療、一般医療などなど、様々な関係者の間を駆けずり回り疲弊している我々のような団体や、当事者、家族たちへの負担、また社会への悪影響は止まりません。

昨年暮れIR推進法が国会で議論された際に、カジノの売上金で、依存症対策をやることを
「マッチポンプ:と散々叩いた人達がいました。私は、その人達に「いやその受益者負担が世界のスタンダードだから」と反論して参りました。

ところがまさかその方達も私たちも予想すらしなかったことが、最悪のシナリオとして現実化して参りました。マッチポンプどころか、このままではただのマッチに過ぎない、
ただ単に、この国に新たな巨大ギャンブル産業が生まれるだけとなってしまいます。

水際で依存症を防ぐことなど不可能です。
カジノはそれを潔く認めたギャンブル産業であって欲しいのです。
そしてその上で、経済効果の方が上回るよう盤石な制度設計をしてこそ、カジノを作る意味があるのではないでしょうか?

どうか秋の臨時国会では、推進派の先生方に、今一度ギャンブル依存症対策にお力添え頂きたいと切に願います。そして何度も言いますが、こういった会議には、長い間ギャンブル依存症対策に取り組んできた民間団体や当事者、家族の声を切り捨てず、拾って頂きたいと思います。


編集部より:この記事は、一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2017年8月1日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。

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田中 紀子
一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表

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