英国でEUへの復帰を望む声が次第に高まっている

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「Business Insider UK」が昨年12月から今月7月までのBrexitに関して2回目の国民投票実施の是非についての趨勢を伝えた。それによると、昨年12月の時点では2回目の国民投票実施について、賛成は33%、反対は52%であった。処が、7月になると賛成41%、反対48%となり、双方の差が次第に縮まっているのである。

2回目の国民投票の実施について、最近自由民主党の党首になったビンス・ケーブルは「確かにひとつの可能性としてはある。しかし、まだその実施の見込みは立っていない」と述べた。トニー・ブレアー元首相は先日Sky Newsのインタビューに答えて、「Brexitを阻止する必要がある」と述べた。その理由として、「経済的そして政治的な被害が生じているのが日々より明確になっているからだ」と指摘した。

今年2月にも、トニー・ブレアーは「本当の(EU離脱の)コストを知らずに投票者はEUから離脱することを支持した」と述べて、「その意見を変えることが出来る機会を与えてあげるべきだ」と指摘している。また、その為には徹底した討論も必要であるとし、「それが崖っぷち置かれている国家をそこから引き離すために必要だ」と述べた。

5月には、トニー・ブレアーはBrexitを無効にする為と、またポピュリズム政治と戦う為に「グローバル・チェンジ協会」を設立している。彼はテリーザ・メイ首相のことを「彼女は良識ある人であるが、セクト主義によって分別の無い政治を選んでしまった」と指摘した。セクト主義に走ったのは保守党内がHard BrexitとSoft Brexitに二分しており、彼女はその圧力の前にHard Brexitを選んだからである。

世論調査や多くの企業家そして政治家の重鎮の間では、メイ首相は幅広く超党派でEUと交渉に臨むべきだという意見が良く聞かれるようになっていた。しかし、彼女はそれに耳を貸すことなく、保守党が有利という予測を基に自らの地位を党内で安定したものにしようと考えて総選挙に踏み切った。その結果は、逆に33議席を失い過半数を維持できなくなった。1922委員会の席でメイ首相は「この困難な事態に皆さんを巻き込んでしまった。私は皆さんをそこから救って見せる」と述べて、今回の失態に謝罪したそうだ。

総選挙の結果から、YouGovによる世論調査によって、51%の国民がEUとの交渉には複数の政党から交渉メンバーを選ぶべきだということが明らかにされた。

そして、メイ首相が主張しているHard Brexitへの支持が次第に減って、EUとの単一市場を尊重するような交渉を進めて行くべきだという意見が保守党内でも次第に優勢になりつつある。

メイ首相の辞任説も浮上している。その場合の後任として有力視されているのが財務相のフィリップ・ハモンドである。彼はBrexitによる経済的インパクトを懸念してEUとの交渉の取り決めは段階的に進めて行くべきだという意見の持ち主である。そして、移民のコントロールをすること以上に雇用と経済の問題を優先すべきだと指摘している。

また、常に将来の首相と目されているボリス・ジョンソン外相もBrexitに伴う費用は途方もない額に及ぶということを最近の議会で口にしている。そして、政府にはHard Brexitの為のプランは今まで計画されていないことも明らかにした。彼も国民がSoft Brexitの方に傾ていることを知っているからである。

英国で消費される食料品の3分の1はEUから輸入されている。しかも、国内で生産されている食料品の多くは移民の手によって生産されているという事実にも拘わらず、メイ首相が提唱しているHard Brexitは移民の入国をコントロールしよとするものである。これらの事情から、Brexitを実行するとインフレが22%まで上昇する可能性もあるということが指摘されている。

今回の選挙結果を踏まえて、メイ首相が当初から主張している英国にとって不利な条件でEUから離脱するくらいなら、合意なしで離脱する方が良いという姿勢に反対を唱える議員が保守党内に目立つようになっている。ポンド安そしてインフレが少しづつ上昇していることから判断されるように、メイ首相が主張している Hard Brexitでは英国経済は相当なる被害を受けることになるというのを保守党の一部議員の間でも深刻に受て止めているのである。そして、ハモンド財務相と同様にSoft Brexitを望む声が党内でも次第に強くなっている。