オタク国際シンポを開いてみた。

ポップテック特区のCiP協議会と、国際オタクイベント協会が共同で「日本コンテンツ愛好家に関する国際研究シンポジウム」~国際化するオタク文化とコンテンツ産業の振興~を開催しました。経産省に支援をいただきました。ありがとうございます。

王向華(香港大学副教授)、出口弘(東京工業大学大学院教授)、古市雅子(北京大学准教授)、植田益朗(アニプレックス コーポレートアドバイザー)、内田治宏(マーザ・アニメーションプラネット執行役員)の各氏からまずはお話をいただきました。

王さんは、日本のコンテンツ産業はマーケットは大きいが、生産者はそんなに儲からず、海賊版の方が儲かると言います。そして、海外にコンテンツ産業を持っていくには異文化翻訳が必要であること強調されました。

古市さんによれば、中国では90年代にテレビが普及し、セーラームーン、スラムダンクなど日本のアニメが人気を博したが、2000年以降、ネットにシフト。海賊版ではなく、日本のクリエイターにお金を落としたいと考えている人は多いとのことです。

出口さんは、マンガは非日常的物語から日常の物語へと変化してきていると言います。90年代はアンハッピー物語ばかりだったが、2000年前後を境に全てハッピーエンドになったとも分析します。

植田さんからはアニプレックスの海外展開について説明いただきました。日本のテレビと同時期に海外でもネット・テレビ・パッケージ等を発信しているそうです。以前は現地任せだったパッケージ販売も、今は自分たちでネット販売しているとのこと。

MARZA内田さんは産業としてのCG映像制作の可能性を強調。今後、医業などにも広がり、多くの産業につながると言います。しかし日本は映像制作支援制度が海外に比べ乏しく、CiPには産業としての底上げを期待するとのことです。

これを受け、国際オタクイベント協会(IOEA)代表の佐藤一毅さんにもお入りいただき、ぼくが司会で短いディスカッションを行いました。

中村:IOEAが世界で提携しているオタク系イベントに来るファンの数って年間どれくらい?

佐藤:350万人くらいです。日本のコンテンツ好きな人、親日の人たちが集まります。

中村:そういうコンテンツはローカライズが大事。メディア環境が変わったことによる影響ってありますか?

王:自分でいろんなコンテンツを発信するようになったけど、やはり文化による違いがあります。日本はLINEが流行ってるけど中国・香港の人たちはやらないというメディアの違いも大事です。

中村:日本企業との共同制作が盛んになっていると聞きます。方向性は?

古市:今の中国は資本力があるので、中国がお金を出して日本のクリエイターが作るという体制ができています。が、中国のクリエイターたちも育ってきています。日本はこれから厳しくなっていくかもしれません。

中村:ところでウチの学生でも、日本人はオタクであることを恥ずかしがるが、留学生はむしろ誇っています。オタク文化って変化しているんでしょうか?

出口:オタクの自画像という意味では変わってきているかもしれません。今のオタクは自分たちでメディアを持っています。編集とかもできちゃう。

中村:アニメの国際展開について、Netflixなどが大きなプレイヤーになっていきます。これはピンチかチャンスか、どっちでしょう?

植田:基本的には今まで出てこれなかった人たちにもチャンスが訪れるということ。アニメ業界も、ものを作るアイデンティティや表現が変わる可能性もありますね。

中村:CiPをベースにした取組は具体的にはどんなことを考えていますか?

内田:他業種との交流を進めたいと思っている。

中村:日本はポップとテックの融合領域がスゴい。再融合をやりたいですね。テクノロジー・オタクを生んでいきましょう。

最後にメッセージをいただきました。

王 :東アジアでの日本コンテンツに関する基盤作りを頑張ってほしい。

古市:日本政府に是非、国を挙げたコンテンツ支援を行ってほしい。

出口:ビジネスと文化の共存関係がきちんとできればいい。

植田:新しいことにチャレンジしていく環境作りに力を入れたい。

内田:日本コンテンツで稼ぎ、それを還元していくというサイクルが作れるよう頑張りたい。

佐藤:文化というものは相互作用するのでオタク文化の世界をどんどん広めていきたい。
オタク文化のような日本文化が絶え間なく続いていけるよう努めたい。

うけたまわりました。ありがとうございました。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年8月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。