前川氏が朝鮮学校を全面的に支援する驚愕発言

衆議院インターネット中継より(編集部)

文部科学省前事務次官の前川喜平氏が、14日付の東京新聞朝刊に掲載されたインタビューで、朝鮮学校への高校授業料無償化の適用について驚愕の発言。

大阪地裁が、朝鮮学校を高校無償化の適用対象外としていた国の決定を「違法」とする判決を先月28日に出した。

同種の件で、広島地裁は19日に「国に裁量の逸脱はなく、適法だ」「朝鮮総連の『不当な支配』を受け、無償化のための支援金が授業料に使われない懸念がある」ことを認めた。

ところが、大阪地裁では、政府や維新関係者に厳しい判決で知られる裁判官が担当し、正反対の判決を出した。国の対応を「教育の機会均等の確保とは無関係な外交的、政治的判断に基づき、法の趣旨を逸脱し、違法で無効だ」と結論づけた。

これについては、朝日新聞が先月30日の社説で「国は司法の判断を重く受けとめ、速やかに支給すべきだ」と書いて話題になった。

都合が良い判決は無視し、特異な判断で知られる裁判官の上級審で覆る事がほぼ確実な判決は重く受け止めろという朝日新聞が得意のダブルスタンダードだ。

そうしたら、今度は、前川氏が、自分は担当審議官として支給に向けて努力したとし、大阪地裁の判決を「妥当だ」と、東京新聞のインタビューで語った。

そして、「今更どの面下げてという話だが、せめて司法で救済してほしい」などと述べたのだという。

私はこの前川氏の発言は三つの意味でおかしいと思う。

第一に、政治・外交的な理由での不支給が不当などというのは、まさに文科行政にありがちな、縦割り行政での岩盤規制を擁護する唯我独尊的思考というものだ。

私も、教育の機会均等を願い、また、教育予算の増額を是とするう文科省の立場として「支給したい」という思いがあるのは、ある意味で当然だと思う。また、昨日、「秘史:北朝鮮と保守政権の持ちつ持たれつの過去(特別寄稿)」でも書いたように、戦後、韓国の李承晩政権が、在日同胞の帰国を嫌い、一方、日本政府は朝鮮人が多く日本に在住するのを嫌っていた時期に、北朝鮮への帰還事業を日本政府も国益に合致するとして支援し、その文脈で帰還の準備としての朝鮮学校の存在に否定的でなかった歴史もあの時期の関西に生きた人間として、リアルタイムで、その推移を憶えている。

朝鮮学校の父母も日本で納税しており、「日本人の税金で朝鮮学校の面倒を見るのは:という一部の保守派の人ほど頭から否定的ではない。

しかし、無償化の適用対象とするか否かは、政府が拉致問題や国際情勢など含めて総合的に判断して問題してはいけないとはいえない。「文科省の縄張りだから、政治や他省庁は入ってくるな」とも受け取れる前川氏の発想は、とうてい容認できない。外務省などに対して、よほど恨みでもあるのだろうか。

第二に、前川氏は、「朝鮮学校の民族教育に北朝鮮につながる部分があるとしても」、それは「日本で生活し、日本の社会の中で、日本人と一緒に社会をつくっていくための民族教育だ」という〝珍説〟を展開している。

次官辞任の際、前川氏は全職員に「多様性が尊重される社会を目指してほしい」とメールを送っている。彼の多様性は、世界で最も極端に多様性を否定している北朝鮮的な全体主義も肯定し、それを正当化することを子供たちにたたき込むことを指すらしい。

第三に、裁判で係争中のこの問題について、文科事務次官をやめたばかりの人が国の立場と違う側を支持するような言動をする事はモラルに反する。本日の産経新聞では、「政策面で対立して辞めたのではないのに、現職のときは我慢していたと辞めてすぐに言うのは社会常識に反する」という私のコメントが出ている。

もし事務次官が、この問題に反対して大臣と対立して辞任したというなら、国と対立する側を支援しても、それはおかしくない。

しかし、前川氏は天下り問題での前代未聞の不祥事でクビになったのである。加計学園問題でも朝鮮学校でも、抵抗しようと思えばできたのに保身のためにしなかったのである。

ところが、辞めたら反対の立場に立つ。とくに、裁判になっている問題についてこのようなことをするのは、一般社会でも許されないのではないか。

東京新聞の記事では、朝鮮学校の生徒が2010年7月に無償化適用を求める署名を文科省に提出したときに、対応した前川審議官が「多くの署名を集めたことを評価したい。日本人にも理解が広がっているのは良いこと」と応じたとしている。

しかし、産経新聞は、「前川氏はこの発言を報じた当時の朝鮮新報の記事について尋ねた翌月の産経新聞の取材に対し、「言った記憶がない」と否定している。このときの前川氏と生徒らとの面会は、日本の報道陣をシャットアウトして行われていた」と報じている。

その朝鮮新報の記事によれば、前川氏は、「無償化」問題が浮上した後、数校の朝鮮学校を訪問し、生徒たちはまじめに勉強したといい、「適用可否がはっきりしない状態が続き、生徒たちを不安な気持ちにさせて申し訳ないと思っている。生徒たちの力でこんなに多くの署名を集めたことを評価したい。日本人にも理解が広がっているということは良いこと。生徒たちの気持ちと署名は、必ず文科大臣に伝える」と話したのだという。

いやはや、なんともいいがたい人が文科次官だったものだ。