米国が解説放送の付与基準を強化したが

米国連邦通信委員会(FCC)は7月にテレビ放送への解説放送の付与基準を強化した

解説放送は映像に関する説明、たとえば情景や出演者の表情などの説明を副音声で伝える、視覚で情景などを把握できない視聴者向けのサービスである。テレビの音声を「副音声」に切り替えると解説放送を聞ける。ドラマなどを中心に付与されて、生放送での実施はむずかしいとされている。

FCCでは、プライムタイムの番組または子供番組について四半期に50時間の解説放送を求めていた。これに加えて午前6時から午後12時までの任意の時間帯で37.5時間の付与義務を追加した。トータルでは四半期に87.5時間となり、1日あたり1時間弱の解説放送付き番組が提供されることになる。対象となる事業者は、ABC、CBS、Fox、NBC、Disney Channel、History、TBS、TNT、USAである。

わが国では放送法によって解説放送の付与を努力義務として放送局に課してきた。該当の箇条は第4条第2項で、箇条前半では解説放送を、後半では字幕付き放送を放送事業者に「できる限り多く」設けるように求めている。

「できる限り多く」どの程度実施されたか国民に知らせるため総務省は毎年付与率を公表している。2015年度データによると、総放送時間に占める解説放送時間の割合はNHK総合では10.1%、在京キー局では2.9%となっている。米国での50時間基準は、各局24時間放送と仮定すると割合2.3%に、87.5時間は4.1%となる。米国での義務の強化は評価できるほどのものではない。

一方、字幕付き放送の総放送時間に占める割合はNHK総合では80.6%、在京キー局では57.9%である。米国では字幕がほぼ100%付与されている。

なぜ、日米ともに解説放送の比率が低いのだろうか。二か国語放送や「日本代表の応援放送」に副音声が使われると解説を付与できなくなる。ドラマなどでは音声や音楽に被らないように解説放送を付けるのがむずかしい。

NHKでは、完成ビデオから音声・非音声・音楽区間を抽出し非音声区間に何文字入れられるか概算したり、ト書きから解説文候補を自動抽出するシステムを開発している。NHKの努力は評価できるし、それが他局より高い比率に結びついているのだろう。