C-2輸送機はUAEに売れるか?

2017年08月28日 06:00

航空自衛隊サイトより(編集部)

自衛隊輸送機の輸出検討 政府、UAEに(日本経済新聞)

例によって日経、しかも1面の記事なので飛ばし記事、誤報という可能性も多いにありえます。

政府が航空自衛隊の新型輸送機「C2」をアラブ首長国連邦(UAE)へ輸出する検討をしていることが分かった。同国の要請を受け、輸送性能などの情報提供を既に始めた。日本が海外に完成品の防衛装備品を輸出したことはなく、実現すれば初のケースになる。必要な協定の整備を進め、防衛装備移転三原則に基づいて最終判断する。

分かったって、既に前回、つまり3年前のIDEXではG to Gの協議でその話しは出ていますし、ぼくも何度がUAEが興味を持っているという話しはご案内してきました。今頃「分かった」はないでしょう。

C2は航続距離が約7600キロメートル、搭載量は約20トン。川崎重工業が製造する。米ロッキード・マーチン製の空自のC130輸送機に比べ航続距離は約2倍、搭載量は約4倍だ。

この部分の速度と航続距離は「自衛隊装備年鑑」(朝雲新聞社)あるいは防衛省のHPを丸写しで書いたものと思われます。

本年の「自衛隊装備年鑑」ではが航続距離7,600km(20t)搭載時)と書いています。この20トンを最大積載量と勘違いしたのでしょう。

で、年鑑にはC-130Hに関して航続距離約2,160nm(約4,000km)(5t搭載時)と記述があります。これまた年鑑を丸写ししたのでしょう。

つまり記者は航空関連の知識がほぼゼロの人間で、その人間が書いた記事をデスクも、整理もおかしいと思わなかった。さすが日本を代表する経済新聞、クオリティペーパーです。この記事の信用性が高いと信じられるでしょうかね?例によって署名記事ではありません(笑

因みにC-130Hの最大積載量は約19トンです。
本来比較するならば既に生産が終わっているH型ではなく現在生産されているC-130Jシリーズ、スーパーハーキュリーと比較をするべきでしょう。C-130Jの最大ペイロードは約19トン、C-10J-30で、約22トンです。航続距離はC-130-30で搭載量約15トンで約5,240キロです。

またたより大きい、KC390やA400M、特に双発のジェット機であるKC390と比較すべきでしょう。記者はこれらの輸送機の存在も知らなかったのではないでしょうか。KC390は最大搭載量約26トン、13.3トンを搭載しての航続距離は約4,800キロです。

さてC-2のペイロードですが、公式見解では30トンぐらい(ジェーンズの年鑑でも同様)となっているようですが、これが極めて怪しいわけです。

平成26年度のライフサイクルコスト報告書では約30トンです。

ところが前年度のライフサイクルコスト報告書では「C-1の約 3 倍」となっています。
C-1の最大ペイロードは約8トンですから、であれば24トンということになります。

既に多く知られていることろですが、C-2は機体の構造強度に問題があり、そのために実用化が遅れました。常識的に考えれば構造強度に問題があれば、その解決には機体重量がつきものとなります。

ところが空自の公式見解では30トンのままです。装備庁や空自は魔法でも使えるのでしょうか?
ぼくがこれまで取材した限りでは最大ペイロード時には燃料搭載を極端に減らしているとのことです。防衛省ではなんというか、世の中では嘘とか、偽装表示といいます。

さて防衛省はどのような説明をUAE側にしたのか大変気になります。

防衛省幹部によると、UAE側から「複数機を購入したい」との意向が届いている。防衛省や経済産業省がC2の技術情報を提供しており、今後は価格や購入機数を含めた交渉を本格化する。輸出に必要な「防衛装備品・技術移転協定」の交渉も近く始める。

まあ、普通考えたら複数機買うのは当たり前だよねえ。こういうことを記事で書いちゃうところもアレです。

まともに考えれば同じような機体であればKC390を選ぶでしょう。
UAEは既にC-17を導入しています。それと同じお値段でペイロードが半分以下の機体を買うでしょうかね。

エンブラエルは航空機メーカーとしての実績もあるし、民間旅客機をベースに開発されています。このため信頼性が高く、また既に採用国も多数あり部品の入手が容易であり、また維持コストも低いでしょう。しかもお値段はC-2の約1/4です。しかもユーザーは「日本空軍」だけです。

更に安く、ペイロードも大きいならばロシアやウクライナの機体もあります。

ですが、何らかの政治的な理由、例えばUAEに対する投資とか技術供与などがあれば、採用される可能性はゼロではないでしょう。我が国でグローバルホークやオスプレイが導入されたような話しと同じです。

まあ、UAEも装備体系グチャグチャですが、取引は有力貴族であるシェイクを等して、地元企業の利益を落とす形で行われますが、シェイク同士の争いもこれまた盛大にあります。

特に湾岸産油国は意思決定が不明瞭で、政府内部の力学も複雑です。このため商売が難しい。欧米メーカーや政府はこの手の取引に慣れていますが、経験が殆どない我が国ではどうでしょうか。いずれにして相手に相応の「お土産」を渡さないと無理でしょう。

そもそも川崎重工に自分で売る気はありません。政府が決めてくれたら売ってあげても宜しくってよ、というスタンスです。傲慢かましていたから陸自のUH-Xでも痛い目をあったわけですが・・・・

まあ、常識があったら民転機売ります、とか海外の航空ショーで売り込んでいないですよ。民転のためには数百億円は掛けて型式・耐空証明とらないといけない。コンポーネントがなまじ日本製で、これらも初めから証明とらないといけない。開発と同時に証明とっていればまだ安くあがったけど、それもやっていない。

初めから売るつもりもない「ウルウル詐欺」を外国でやっているわけですが、そんなメーカーを信用するユーザーがあるでしょうかね?

【市ヶ谷の噂】

陸自はAAV7の武装として40ミリグレネードランチャーMk19を導入するも訓練弾はケチって、96式自動擲弾銃用の訓練弾を改造して使用するつもりが、上手くいかず射撃訓練ができない、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年8月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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