高山善廣頚椎完全損傷問題の闇 蝶野正洋の警鐘は正しい

2017年09月06日 18:00

私はプロレスが大好きな人材である。将来の娘の結婚式に向け、父は昔、レスラーだっという証拠写真(?)をたくさん残そうとしている。最近、娘との写真でセミヌードが増えたのもそのような理由である。毎日、ジムに通い、日焼けサロンにも通い、金髪に近い茶髪にし、レスラー風のルックスを保っている。

そのプロレス界に激震が走っている。「プロレス界の帝王」高山善廣選手が5月4日のDDTの大阪大会で前方回転エビ固めをかける際に頭部を強打し、頚椎完全損傷の大怪我をしてしまったのだ。すでに数週間前に『週刊文春』が報じ、今週、記者会見が行われた。

これは大事件だ。一般紙含め、メディアはより取り上げた方が良い事件である。プロレスの安全対策という論点もそうだが、フリーランスと企業との付き合い方という論点も含んでいると私は考える。

プロレス界では、今年、事故のニュースが相次いでいる。業界の雄である新日本プロレス本間朋晃選手、柴田勝頼選手の事故が連続して起こったばかりだ。二人とも回復に向かっている。そんな中で起きたのが、高山善廣選手の事故だった。

高山善廣選手は、素人ではない。デビュー25年のベテランだ。数々の名勝負を残している。その彼が、過激な技ではなく、若手もこなす前方回転エビ固めをかける際に頭部を強打したという点が気になっている。

確認できるのは、プロレスはそもそも危険であるということだ。簡単な技でも怪我をしてしまう。ただ、それ以上に、自分からかけたこの技で怪我をしてしまうほど、高山善廣選手には疲労やダメージが蓄積していたのではないか。

高山善廣選手のファンであり、今回の事故にショックを受けている一人だが、これは勇気を持って言わなくてはならない。これは、彼を起用したDDT、さらには高山善廣選手にも相当問題があったのではないか。それは、健康管理の問題である。

レスラーには古傷がある者も多い。さらには、長年の身体の酷使でダメージが蓄積されていく。特に首にダメージが蓄積されていく。受け身の名手と言われた三沢光晴選手もリング上で亡くなった。ダメージの蓄積の問題だ。

高山善廣選手の試合を様々な団体で見ることがあったが、明らかに練習が不足していると感じる瞬間はあった。長身で巨体なので、レスラーとしての風格はある。出るだけで観客をわかせる彼はプロだ。ただ、明らかにトレーニングが出来ていないと感じる瞬間があった。身体も仕上がっていない。2004年に試合中に脳梗塞を発症した後から、身体の仕上がりや動きは明らかに以前ほどではなくなっていた。

彼は長年、フリーランスとして、多くの団体に上がってきた。彼の体調、試合数などを考慮して団体は起用するべきだったし、彼も仕事を選ぶべきだったのだが。そうも言っていられないのがこの業界だ。

会見には事故が起こった団体の代表、高木三四郎氏も出席していたが、彼の責任は重いと私は見ている。盟友の鈴木みのる選手が涙ながらのエールをおくったという。ヒールの彼がそう叫ぶのは、想うところが多々あるだろう。ただ、ここでは高山善廣選手の回復(絶望的だと言われているが)を祈るだけではなく、団体、業界をどうするかという提言をするべきではなかったか。

その点、業界をあげてどうするかという視点で提言した、蝶野正洋は偉い。

蝶野正洋、高山善廣のケガに「取り返しがつかない。団体が規制を作らないと止まらない」 : スポーツ報知 

これは、ややメタ化していうならば、別にプロレスという、言ってみれば特殊な世界の話だけではないと私は考えている。企業とフリーランスの付き合い方の話である。社員同然に仕事を請け、酷使されているフリーランスがいる。雇用と請負は違うので、フリーランスは徹夜の連続で働いたりもする。目の前で倒れそうになっている人を使うことを企業はどう考えるのだろう。今後、副業・兼業の推進などが行われる際に気になる論点である。

プロレス界は何度めかのブームを迎えていると言われている。個人的には、プロレスブームではなく、新日本プロレスブームにしか見えないのだが。

業界をあげて健康管理に取り組むこと、さらには、フリーランスとの付き合い方をどうするかという点に注目するべきだろう。


働きすぎはよくないのだ。最新作、よろしく。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2017年9月6日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は高山善廣選手の公式ブログより引用)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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常見 陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師

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