北朝鮮の核ミサイルは中ロと一体の戦略

中村 仁

朝鮮中央通信より(編集部)

なぜ名指しの非難を避けるのか

北朝鮮の脅威を封じ込めるために、中国とロシアにも、対北への制裁に加わる説得が続けられています。中ロは北朝鮮の核ミサイル戦略を支援するどころか、一体となって推進しているとかしか思えません。いくら国際社会や国連が協力を呼び掛けても、中ロが乗ってこないはずです。

北朝鮮も中ロも民主主義国家ではなく、情報は完全に統制されていますから、これら3国の間で、どのようなやり取りや協力がなされているのか分かりません。彼らの言動の端々をつなげ、どう解釈したらいいのか、推測するしかありません。断片的ながらも、少しづつ舞台裏の動きをつなげてみると、北中ロの一体化戦略が濃厚であるとしか考えられないような気がしてきます。

ロシア極東のウラジオストクにおける「東方経済フォーラム」に、北朝鮮からも代表団が出席します。昨日、ロシアと北朝鮮の担当官が一室でにこやかに、協議、交渉している映像が流れました。国際社会から激しい非難を浴び、ロシアも北朝鮮に圧力をかけるよう要請されている時期です。ロシアは北朝鮮の側に立っているぞと、見せつけるために、故意に撮影させたのでしょうか。

外交辞令の応酬に辟易する

プーチン大統領は「制裁によって北朝鮮が大量破壊兵器を放棄することは考えられない」と、述べました。安倍首相との電話会談でも、「国際社会で緊密に連携していこう」と外交辞令を発する一方、「対話を追求しなければならない」と指摘しました。国連ロシア大使は「追加制裁が急いでできるとは思えない」と、語っています。本気で北朝鮮を封じ込める気はないと、判断します。

発射に成功した長距離弾道弾(ICBM)のエンジンは、ウクライナ製でロシアから輸出されたとの情報がメディアに流れています。急速に高度化するICBMを北朝鮮単独で開発できるはずはなく、関係国の協力、供与で支えられているとみるのが常識的かもしれません。協力というより、一体となって開発させているとの判断したほうが全体像が見えてきます。

中国はどうでしょうか。中国外務省は声明で、「核実験に対し、断固とした反対と強烈な避難を表明する。朝鮮半島の非核化を実現し、核不拡散体制を守ることは中国の揺るぎない立場だ」、と指摘しました。中国の外交、政治声明は外交辞令、建前であることが多く、しかも外務省は中国の政治体制の中で軽んじられているそうですから、まともに受け取ってはなりません。

中ロは本気で乗ってこない

米国のヘイリー国連大使は、中国に向けて「北朝鮮の核開発を助けるような国を見ている」と、述べました。北朝鮮の貿易の90%は対中国だそうですから、中国次第で北朝鮮の政治、経済、社会は動かせるはずなのに、「平和的な解決が重要だ」と強調し、追加制裁に乗ってきそうにありません。乗ってきたとしても、どこまで本気でやるのか疑問ですね。

国連、国際社会の動きは歯がゆい限りです。米英首脳が電話会談で「中国が重要な役割を果たし、あらゆる影響力を行使すべきだ」と、叫んでもむなしいのです。国連事務総長が「安全保障理事会が検討している圧力が、北朝鮮との交渉につながることを信じている」と言明しても、迫力がないのです。安倍首相は何度も、「北朝鮮を断じて容認できない」、「断固たる対応をしていく」と、国民に語りかけています。日本として、何をする、何ができるというのでしょうか。

中国とロシアには、北朝鮮への関与の仕方に差はあるのかもしれません。差はあっても、北朝鮮の開発に対する協力、支援などというレベルではなく、北と一体になって核ミサイル戦略を推進しているに違いないという点が重要です。狂気の北朝鮮が朝鮮半島に存在していること自体が中ロの外交的、地政学的な利益に合致するのです。

核開発の実相を暴け

なぜ北朝鮮ばかりを非難し、中ロに制裁への参加を呼び掛けたり、北に圧力をかける要請だけにとどめているのでしょうか。核ミサイル開発で3か国は一体化していると、名指しで非難する国がでてこないのが不思議です。そう断定しなくても、3か国が一体になっているとの疑いを唱える国、専門家、メディアがでてこないのが不思議です。

中ロを名指しで非難すれば、中ロが国連決議違反、国際法違反を侵していると指摘するのと等しいことになります。そのリスクを回避しているから、中ロに足元をみられているのでしょう。また、北朝鮮は将来にわたり、核を放棄することはありますまい。核を放棄する見返りに北朝鮮の独裁体制を保証するといっても、まず乗ってこないでしょう。

「北朝鮮は世界がみたこともないような炎と怒り直面にするだろう」(トランプ大統領)と、脅しをかけるくらいならなら、中ロの反発を覚悟の上で、北朝鮮の核開発の実相を暴くことを優先してほしいと思います。メディアも北朝鮮批判と中ロへの協力要請など、最も無難な報道に終始しているべきではないと考えます。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年9月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。