非核三原則って何?

2017年09月08日 16:00

自民党の石破茂さんが「米国の核の傘で守ってもらうといいながら、日本国内にそれ(核兵器)は置きません、というのは本当に正しい議論か」といって、非核三原則の見直しを求めました――といってもややこしい話なので、よい子のみなさんにはわからないでしょう。

そもそも「非核三原則」という法律や条約はありません。外務省のウェブサイトによると、1971年の「非核兵器ならびに沖縄米軍基地縮小に関する衆議院決議」で

政府は、核兵器を持たず、作らず、持ち込まさずの非核三原則を遵守するとともに、沖縄返還時に適切なる手段をもって、核が沖縄に存在しないこと、ならびに返還後も核を持ち込ませないことを明らかにする措置をとるべきである。

と決議されましたが、このときは閣議決定もされていません。それなのに佐藤栄作首相は「非核三原則で平和に貢献した」という理由で、ノーベル平和賞を受賞しました。ところが、これを法律にしようという話がたびたび野党から出ても、自民党は賛成しませんでした。なぜでしょうか?

それは「持ち込ませず」という原則が、実際には守られていなかったからです。1960年に日米安保条約を改正したとき、日本に核を配備する密約が口頭で行われ、それを前提に条約は改正されました。沖縄の米軍基地にはずっと核兵器が配備されており、佐藤内閣が沖縄の返還を実現したときも、沖縄への核の持ち込みを認めることが返還の条件でした。

密約といっても、悪いことをしたわけではありません。核兵器は安保条約で禁止しているわけでもないので、別に秘密にする必要はないのです。NATO(北大西洋条約機構)には核兵器が配備され、それが抑止力になっていますが、日本にはアメリカが原爆を落としたという「国民感情」に配慮して、核兵器があるような、ないような奇妙な状態が戦後ずっと続いてきました。

しかしその後アメリカの戦略が変わり、核弾頭を搭載した巡航ミサイル「トマホーク」は第7艦隊に配備されなくなり、オバマ政権で廃棄されました。今では太平洋の戦略核兵器は、アメリカ西海岸の原子力潜水艦に搭載された潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)とグアムの戦略爆撃機に搭載されています。

だから今では非核三原則は意味がないのですが、朝鮮半島の情勢が変わってきたので、これを考え直す必要はあると思います。ただ石破さんもいうように「持たず、作らず」を変えることは政治的に不可能です。日本が核武装するとなったら、核拡散防止条約を脱退しなければならず、日米同盟も壊れるおそれがあるからです。

でも核兵器を日本国内に「持ち込ませず」という原則はどうでしょうか。NATOに配備したような小型の(地上戦に使う)戦術核兵器を日本に配備して米軍と「共有」することは意味がないでしょう。配備するとすれば韓国だと思います。

では巡航ミサイルや弾道ミサイルなど、長距離の戦略核兵器はどうでしょうか。第7艦隊の空母や原潜はもう核兵器を積んでいないので無理ですが、グアムに配備されているB1爆撃機(写真)などの戦略爆撃機に核兵器を積んで日本の米軍基地に配備することは、技術的には不可能ではありません。

ただ核兵器を積んだ戦略爆撃機を日本の米軍基地に配備するとなると、輸送機「オスプレイ」を配備するだけで大騒ぎしている人々が、もっと激しく反対運動をくり広げるでしょう。これを北朝鮮が「挑発」とみなして、その基地を攻撃してくる可能性もあります。

これ以上は、よい子のみなさんにはむずかしい大人の話ですが、非核三原則を「議論もせず」でいいのか、という石破さんの問題提起は正しいと思います。平和ボケのみなさんも最近はおとなしくなったので、安倍さんも思いきって議論を始めてはどうでしょうか。(写真はウィキペディアより)

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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