日本経済新聞電子版が「介護費膨張 3つの温床 25年度に20兆円」と伝えた。第一の温床は自己負担が少ない「生活援助」サービスである。第二がサービス付き高齢者住宅(サ高住)による需要の囲い込みで、サ高住の運営企業が住民向けに頻繁な在宅サービスを供給するケースが急増したという。第三がケアプランで、介護保険運営主体の市町村にはプランを精査して見直しを迫る権限がないそうだ。記事は、来年度の介護報酬改定での改革が不可避であると指摘している。
記事の範囲は人手による介護をどのように合理化するかにとどまっている。一方、情報通信技術を使えば介護サービスが圧倒的に改善される可能性がある。
高齢者の居宅にセンサを設置し、朝起きたか、食事をとっているか、買い物に出ているかなどをモニタする。これらを満たすならヘルパーが出向く必要はない。一方、ベッドでもソファでもない場所で20分も30分も動かないとなれば緊急事態であり、ヘルパー・近隣住民・家族などが駆け付けて対応する。
ウェアラブルセンサで脈拍や血圧を常時モニタし、そのデータを医療機関に送信する。データに異常があると医師が介入し、軽度ならば生活アドバイスを行い処方薬が出し重度であれば入院させる。
このように、半自立の人々の日常生活は技術の力を借りれば介護に必要な人的資源を節減できる。人手による介護サービスは自立の程度が低い人々に集中させればよい。このように情報通信技術を使って介護費の膨張を食い止めようという「自立生活支援技術」に世界各国の注目が集まっている。
わが国は高齢化「先進国」であって、わが国でこの技術の実用化に成功すれば、それを世界に輸出するビジネスチャンスが生まれる可能性がある。一方で、高齢化率は低いが人口が多いので高齢者が多いインドなどが安価に提供し始めれば、チャンスはあっという間に消える。
わが国企業は自立生活支援技術への取り組みを強化するのがよい。来週9月18日からこの技術に関する国際標準化会議(IEC/SyC AAL)が米国クリーブランドで開催され、僕も参加する。会議の様子は別記事で提供したい。