希望の党は「日本のナチス」になるか

2017年09月30日 14:00

小池百合子氏がヒトラーに似ているという人が多い。私のアゴラの記事もよく読まれているが、私は「ヒトラー的手法」と書いたのであって、彼女がヒトラーのようなファシストだといいたいのではない。よくも悪くも、彼女にそれほどの力はないと思う。

ただ今の日本が、ワイマール共和国末期に似ている面もある。第一党はずっと社民党だったが、それを共産党が「社会ファシズム」と攻撃し、武装反乱を起こしたりして政情不安が続いた。共産党を抑え込むのはまともな党では無理なので、チョビヒゲの乱暴者を利用しよう。そのあとは何とかなる――と当時の支配層は考えた。

ナチスは過半数を取ったわけではなく、首相が指名できない状態でヒトラーは暫定的に首相に指名された。彼は保守派の期待にこたえて共産党を絶滅させたが、全権委任法で保守派も絶滅させてしまった。

ヒトラーの政治的基盤はなかったが、国民は彼を熱狂的に支持した。彼はラジオや映画を活用し、「既存の政治をリセットする」という(中身のない)雄弁とイメージ戦略で国民の支持を集めたのだ。

こう見ると小池氏と似ている面が多いが、大きな違いがある。1933年のドイツは大恐慌とハイパーインフレで失業者が500万人を超え、国民が雇用を求めていたことだ。ヒトラーは経済政策をほとんど知らなかったが、徴兵と軍備増強で劇的に失業を減らし、国民に支持された。

日本の最近の政権をみても、1990年代前半のバブル崩壊が細川政権を生み、1998年以降の金融危機が小泉政権を生み、2008年のリーマン・ショックが翌年の民主党政権を生んだように、経済危機が政治を「リセット」したいという願望を生み出す。その点では、完全雇用に近い今の状態で安倍政権を倒す必然性はない。

だから今は、ドイツの1933年には似ていない。希望の党はガラパゴス左翼をたたき出して「普通の野党」になることはできようが、ナチスのように政権を取るところまではいかないだろう。自民・公明で過半数を割り込むと「大連立」も視野に入るが、小池氏が首相になることは考えられない。

むしろ問題は官製バブルが崩壊したときだろう。国債は日銀が買い支えれば何とかなるが、1990年代末のように地方銀行で「取り付け」が連鎖したら、日銀に止めることはできない。次の金融危機の規模は、90年代より一桁大きい。

そういう状態になると、大規模な財政出動や「消費税ゼロ」を主張する勢力が政権を取ることは考えられる。原田泰氏も賞賛する「ヒトラー型の景気対策」が出てくると、絶望した国民は歓呼して迎えるだろう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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