同じ選挙区から複数の議員を当選させるには

いつもいうのだが、選挙で投票先を決めるときは、誰がいちばん良いというだけでなく、好ましい結果を実現するためにどうすれば良いか考えて投票するべきだ。

当選することが決まり切っている候補とか落ちるに決まっている候補に投票しても仕方ないし、比例では重複立候補の候補をどう当選させるか、また、接戦で最後の一議席を争っている党で好きな方に入れるとかいう工夫も必要だ。

そのあたりを、滋賀1区を例にとって解説してみよう。

というのは、私はいま京都2区に住んでいるが、生まれはこの選挙区だし、出馬する候補は、いずれも、良く存じ上げている素晴らしい方々なので、できれば全員に当選して欲しいので、自分は投票できないが、気が気でないのである。

今回、出馬されるのは、自民党の現職で公明も推薦する大岡敏孝、希望の公認漏れで無所属の嘉田由紀子、社民公認で共産党も協力する小坂淑子の3氏である。

左から大岡氏、嘉田氏、小坂氏(公式サイト、Wikipedia:編集部)

過去の選挙では、小選挙区発足以来、川端達夫(新進)、川端達夫(民主)、上野賢一郎(自民)、川端達夫(民主)、大岡敏孝(自民)、大岡敏孝(自民)となっている。今回は、第1回から連続して立候補していた川端達夫氏(衆議院副議長)に代わって嘉田由紀子元知事(元日本未来の党代表)が出馬することになって大波乱となっている。

もともと民進党から出馬のはずで、希望の党の公認を望んだが、他党党首経験者ということではじかれ、無所属で出馬するが、比例では希望を推すということらしい。

この保守的な綱領の希望からの出馬は、嘉田氏を支えてきた市民派の怒りを買い、社民党の小坂淑子氏の擁立を決め、それに、共産党も候補を降ろして協力することになった。小坂氏は立派な教育者で、人柄への信頼は党派を超えて高く、自民党支持者でも小坂さんならという人も多い。

結果を普通に予想すれば、これまで2度、川端氏を下して当選し、財務政務官もつとめて有望株と言われる大岡氏の地盤は堅いのだが、嘉田氏は知事として余力を残して引退して、まだまだ知名度抜群で、普通にはトップであることが予想されている。

ただ、そもそも、嘉田氏は最初に知事選挙に立候補したときに応援したのは政党では社民党だけだったし、勇退するときに後継者として三日月大造現知事を推し、保守県政への回帰を防いだグループは小坂氏を担いでいる。おそらく、盟友の阿部知子氏が希望から排除されて立憲民主党へ回ったことも含めてこんなはずでなかったと言う事だろう。

とはいえ、小坂氏の基礎票は、大岡・嘉田氏に比べて少ないので小選挙区で当選するのは難しい。

ところが、比例区に目を移すと、近畿比例区は定数28と全国最大。前回(定数29)は自民9、維新8、民主4、公明4、共産4だったが、社民党も2009年まではコンスタントに議席を獲得していたし、今回も全国でも可能性が比較的多い選挙区だ。

候補は、大阪から出馬する服部良平氏と二人だけなので、惜敗率で服部氏より上回れば当選の可能性は十分なのである。

一方、嘉田氏は無所属なので小選挙区で勝利しなければ落選だが、逆に、嘉田氏が取り過ぎると、せっかくキャリアを築いて「有望で地元として使える」与党政治家に成長したし大岡氏が比例でも危うくなるし、小坂氏も当選できない。

それに、大岡氏の場合は、公明党の支援が頼みの綱だから、比例は自民と安易に言えない立場にある。

というわけで、嘉田氏の得票が予想をやや下回るが、ぎりぎりで当選し、大岡氏は接戦で負けるが、惜敗率トップで上がり、公明党も満足すべき得票を比例で獲得し、小坂氏も全体の二割以上の票を獲得し、社民党も1議席を確保できるくらいの比例票をとれれば、3人とも当選できて、公明党も面目がたち、みんなハッピーということになるのだが、そんなうまくいくのは至難の業だ。選挙情勢をよく見て、有権者ができるだけたくさんの候補者を地元から当選させるように、賢く投票しないと、ということなのである。