選挙はまだなのに異を唱えて党首批判をする違和感

尾藤 克之

2015年の安全保障関連法案の採決時の様子

ここに、鈴木さん(仮名)というビジネスパーソンがいる。ハイスペックな人材であることから年収は3000万円に近い。先日まで、「民進商事」という業界大手の商社に勤務していた。その鈴木さんが仕事に悩んでいるようだ。このような言い分らしい。

言い分を聞いてみると

私は先月まで「民進商事」という会社に所属していました。大手で給料も高いのですが合併を繰り返してきたせいか経営理念が統一されていません。部門間の意識の壁は非常に高く、情報の共有などもされませんでした。先月から、M氏が社長に就任しました。社長に就任したM氏は設立メンバーで社内の要職をつとめてきました。

そんななか、突然、全社員参加の社員総会が開催され「希望カンパニー」と合併をするとの発表がありました。「希望カンパニー」は創業したてのベンチャーですが、経営者にカリスマ性がありいつも話題になっています。「希望カンパニー」は「経営理念にそぐわない人は好ましくない」と言いました。私はそのとおりだと思いました。

その後、「希望カンパニー」に入社しました。株価は連日ストップ高、アナリストも上昇率が見込める「Strong Buy」に設定し買い推奨をしています。私の輝かしい未来は疑いないものでした。しかし、「希望カンパニー」に入社しなかった人たちが「立憲商店」を設立したのです。私たちと同業ですからお客様が重なります。

さらに、「立憲商店」は市場から好感されました。その後、少しずつ「希望カンパニー」の人気は落ちていきました。こうなったら、1人でも行動を起こさなくてはいけません。私はお客様に対して、「希望カンパニー」はひどい会社だ、だまされた!と主張することにしました。でも、お客様の反応は冷ややかです。何故でしょうか。

選挙はまだ終わっていない

「隣の芝生は青く見える」という表現がある。他人のものはよく見えることのたとえで使用する。転職を繰り返す人を指す「ジョブホッパー」という言葉がある。しかし、転職回数が多すぎるとキャリアにプラスには働かないから、通常は社内で嫌なことがあってもガマンをする。会社とソリが合わなくても即環境を変えることは難しい。

また、転職をする際に会社の秘密を他に漏らすことはできない。不正競争防止法に抵触する可能性がある。在籍中は就業規則に則った行動が求められる。業務上の地位を利用しての個人的な利益の追求や、会社の秩序、風紀を乱す行為は許されない。

19日の読売新聞(希望の民進組「小池離れ」…「排除の論理」反発)によれば、香川1区から希望の党公認で立候補した小川淳也氏は、高松市内で開かれた集会で、「排除の論理」発言について、「寛容さなくして国民がついてくるはずがない」と批判したとされている。合流組に「踏み絵に使うのは間違っている」とも指摘したようだ。

さらに、「こうした情勢からか、党ではなく自分を押し出す選挙戦を進める候補者も目立つ。柚木道義前衆院議員(岡山4区)は選挙区で『安倍9条改憲は危険!』などと主張するビラを配布。15日のフェイスブックでは『柚木党で応援しとるよ!』を信じて闘い抜くと記した」(原文ママ)とされている。

選挙は終わっていない。希望の党が容認する「憲法9条改正」に賛同したはずなのに公然と異を唱えるとはいかなる了見か。さらに、小池百合子党首を批判する声まで上がる。会社員であれば、在職中にメディアに対して、会社批判と社長批判をするようなものだろう。

他責は同志に悪影響を与える

2012年12月の選挙で民主党は大敗した。現役閣僚8名が落選する歴史的大敗である。選挙後、野田総理や党の責任を批判する発言が噴出した。岡田副総理は「最終的には自分の責任。執行部や他人の責任にするところから改めないと、この党は再生できない」と発言した。同じ民主党のなかでも実力のある人は選挙区で当選を果たしている。

今回の選挙で劣勢を伝えられている中心メンバーがいる。とくに東京選挙区の候補者は厳しいと報じられている。小池党首はまだ敗戦の弁を述べたわけではない。いまなら「残り2日やれることを精一杯やる」と話すだろう。明日になれば「残り1日やれることを精一杯やる」と話すだろう。それが党首たるゆえんではないかと思う。

他責に終始する人は、そもそも当選したのも「執行部のおかげ」「自分の力ではない」と露呈しているようなものだ。言いたいことがあっても堪えることが大切ではないのか。しかも選挙は終わっていない。このような行動が、政治不信を招き、同志にどれほどの悪影響を与えるか考えないのだろうか。まったく不可解である。

尾藤克之
コラムニスト

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