「仕事がデキル人」とはどのような人だろうか。まず、スピードが早い人のことをを「仕事がデキル人」と呼ぶことは多い。仕事のクオリティは人によって評価が異なるが、スピードは可視化しやすい。10日かかる仕事を1日で終わらせれば誰もが早いと感じるだろう。私の経験上、「クオリティ」を口にする人は仕事ができないことが多い。
今回は、『1分で仕事を片づける技術』(あさ出版)を紹介したい。著者は、経営コンサルタントの鈴木進介(以下、鈴木氏)である。
やり方より結果にこだわる
――行動のスピードが上がらない人の特徴として「自分のやり方にこだわりすぎる」という特徴がある。自分で創意工夫し、努力して身につけたスキルだから「こだわり」がある。しかし仕事は成果を出さなくては意味が無い。もし、あなたの成果があがっていないなら考えなければいけない。柔軟性をもつことは大切である。
「仕事はあなたの充足感や、達成感を得るために存在しているのではありません。最速で成果を出すのための手段を選ぶことが肝心です。その手段はいつも自分で編み出さなければいけないわけではありません。最速で最適なつもりでもスピードが上がっていなければ、時には他人のやり方に目線を移すことも必要です。」(鈴木氏)
「私もかつては自分のやり方にこだわりすぎる人間でした。しかし、頑張っても成果が出ず、仕事のスピードも上がりません。万策尽きた私は、仕事が早いことで社内で有名だった先輩のマネを徹底的にすることにしました。」(同)
――社内で有名だった、その先輩のマネとは次のようなものだった。決して難しいものではない。5つほどあるので紹介しておきたい。
(1)ゼロから提案書をつくるのではなく頻度の高いものを事前につくっておく。
(2)パソコンのショートカットキーのパターンを覚える。
(3)単語登録や文例登録をしておき、一発変換で文字入力できるようにする。
(4)売上が大きい上位2割の顧客を選別し、効率よく営業訪問する。
(5)担当レベルではなく決裁権を握る人に事前に根回ししておく。
「あまり深くは考えずに、ただひたすらマネることに注力しました。それこそ歩く速度まで。その結果、私は仕事が早いという評判がたち、大きなプロジェクトにも同期を差し置いて大抜擢されるようになりました。先輩のマネをしたからこそ手にすることができた評価です。複雑な気持ちでしたがありがたいことでした。」(鈴木氏)
自分のやり方をリセットする
――「守・破・離」という考え方がある。これは、道を究めたいのであれば、いったん自分のやり方をすべて捨てて師匠に言われた型を守ることを意味する。
「仕事道においても『守破離』の精神は効果的です。一流の人をじっと観察し、脳をコピーするような心意気で徹底してマネをするうちに、その人と同じ行動がとれるようになります。そのときには、格段に仕事が早く効率的になっているはずです。できる人の仕事術を完全にコピペすること。相手の行動を観察することです。」(鈴木氏)
「コピペするにしても、そこは優先順位をつけたほうがいいでしょう。実現可能性が高く、効果が大きいものからマネするようにしてください。」(同)
――筆者のケースを紹介しておきたい。20代後半、ある理由で転職活動をしているときバブルはすでに崩壊し超氷河期の時代にはいっていた。どうにか某コンサルティング会社に3ヶ月の契約社員で潜り込むことができた。3ヶ月で実績があげられなければクビである。入社当日、営業会議に参加したところ飛び交う会社名は有名企業ばかりだった。
名前のあがった会社の多くはコネがあった。社長に話すと「連れて行け」。約1ヶ月で、役員以上と面会できる20社余りを訪問した。3ヶ月契約が、翌月からシニアマネジャーに昇進し報酬も数倍になる。その後は、トップにリーチする方法を体系化していった。ある日、他社の役員からなぜトップに会えるのか聞かれた。説明したら講演依頼があった。
その役員は、半年後に研修会社を立ち上げた。いまの売上は数億円規模だ。デキル人は、使えるなと思えば、相手が年下だろうが、一兵卒だろうが真剣に話を聞きに行く。鈴木氏の理論に追記するなら、コピペをする際には、先入観を持つことなく、ありのままを素直に受け入れることが重要ということになる。「虚心坦懐」ということだろうか。
本書には、今回紹介した「仕事のコピペ術」以外にも、多くのメソッドが紹介されている。仕事が早いうえに成果を出し続ける人は、いったいどんなやり方をしているのか。平易でわかりやすい仕事術を知りたい人には役立つのではないかと思う。
参考書籍
『1分で仕事を片づける技術』(あさ出版)
尾藤克之
コラムニスト
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