【映画評】不都合な真実2:放置された地球

渡 まち子
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元アメリカ副大統領アル・ゴアが、地球環境問題を訴える講演旅行を記録して、ヒットした前作「不都合な真実」から10年が経ち、地球温暖化は改善するかと思われたが、地球はさらなる危機に瀕していた。時に声を荒げ、必死の形相で環境問題を人々に訴えるゴア氏の姿と、地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定の実現に向け奔走した人々の姿を追う…。

元アメリカ副大統領アル・ゴアの地球温暖化に関する講演を追い、アカデミー賞2部門を受賞したドキュメンタリー「不都合な真実」の続編「不都合な真実2:放置された地球」。前作はオスカーを受賞し、アル・ゴア自身はノーベル平和賞を受賞するという、これ以上ない評価を受けたというのに、10年後、地球温暖化はさらに危機感を増している事実に気持ちが沈む。前作が地球環境問題の入門編だとしたら、本作は地球環境問題改善がいかに難題かを突きつける実践編と言えよう。

講演会と講演旅行を記録したシンプルかつユニークなスタイルだった前作と違い、本作ではますます深刻となった異常気象とハリケーンなどによる大災害の被害の数々を生々しくスクリーンに映し出して、地球の危機をより強く訴えている。だが、石炭エネルギーを手放さない大国の言い分は、先進国には耳が痛いものだった。パリ協定に向けて懸命に戦う姿が描かれ、協定実現が本作のひとつのクライマックスになっているのだが、映画には、地球温暖化はでっちあげと言い切ってパリ協定離脱を決めたトランプ政権がゴアの努力をあっさりと無にしてしまう事実も盛り込まれている。温暖化を止めなければならないとの思いに共感しても、いつしか諦めの境地に達するのも事実だ。だからこそ、それでも希望を捨てずに闘いを続けるアル・ゴアの、まっすぐな生き様に感動を覚えてしまうのである。地球温暖化への警鐘よりも、アル・ゴアの人間性が前面に出ている映画の是非は別として、では私たち個人はいったい何ができるのかと、改めて考えさせられた。同時に、映画に何ができるのかという問いも。まずは見てほしい。その後に考えてほしい。そんなゴアの声が聞こえてくる1本だ。
【65点】
(原題「AN INCONVENIENT SEQUEL:TRUTH TO POWER」)
(アメリカ/ボニー・コーエン、ジョン・シェンク監督/アル・ゴア、他)
(危機感度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年11月17日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。