後々の子育ての安心のために離婚の際には公正証書を作成すべき --- 上原 ゆかり

最初に、公正証書がどういうものか説明します。公正証書は、法務大臣が任命する公証人(裁判官、検察官、法務局長、弁護士などを長年つとめた人から選定)が作成する公文書のことです。強い効力があり、裁判になっても立証の必要性がありません。公正証書の原本は、公証役場に保存されますから、紛失・偽造などの心配も不要です。

さらに相手方が約束どおりの支払をしない場合には給料等の差押えが可能になります。公正証書に「強制執行」の一文を入れることにより、不動産・動産・給料などの財産を差し押さえることが可能になるのです。

私の事例について紹介

私は、16年前に離婚を経験した協議離婚で、息子の養育権を取った経験があります。日本は、年間離婚者数25万組。今や50万人が離婚を経験している離婚大国です。この事実を踏まえて、私の事例を多くの人にお伝えしたいと思います。

離婚を決断したとき、元夫は、数件の美容室を経営していました。当時、私は29歳、息子は6歳で小学校の入学式目前の時期でした。公証人からは自営業者の公正証書は無意味になるとも指摘されましたが、後々のことを考えて残すことにしました。

自営業者に対しては公正書証がなぜ無意味になるかについて補足します。自営業者(+個人事業主)の場合は、給与に相当する収入(売上)を操作可能です。あくまで本人の支払う意思の問題になり、公正証書の効力(強制力)を発揮することができません。

数年後、元夫は再々婚をし子供が2人生まれました。しかし経営していた美容室は倒産をしていました。元夫との公正証書の内容は、「私との間に生まれた長男が大学を卒業するまでの22歳までの支払い期間」というものです。

元夫は美容室倒産後は、大手チェーン美容室のマネージャー職にありました。そんな時、元夫から養育費の軽減を通知され、一方的に支払いを止められます。それで、いよいよ公正証書の威力発揮を試みることになりました。

まずは公正証書を作成した公証役場に行き、地方裁判所の債権取り立て係に提出する書類を作ってもらい窓口に提出します。次に債権取り立て係の方が細かく、残り取り立て可能額を算出します。

給与債権の場合は1/2もの差し押さえが可能で、且つ債務者の勤務先へも裁判所から連絡が行く為に債務者の意志に関わらずに会社が債務者の給与1/2を、債権者の口座に自動的に振り込まれます。私はこのシステムを5年間活用し約束の養育費を満額頂くことができました。

この経験から言える事は、争いのない協議離婚の場合でも書面化することの有効性が確認できたことです。そして離婚する夫が自営業者であっても、将来的には就業スタイルが変化する場合もありえるので公正証書は必ず作成すべきという点です。

元夫から養育費を受け取っている妻(私が)が再婚をしても、養育費は子に対してのものなので法的にも守られます。支払い側の夫が再婚をしても、子に対しての養育費の支払い義務は消滅しません。

養育費の支払い期間は、一般的には成人になる20歳になるまでが基本ですが、私の場合は息子が大学に進学すると仮定し夫もそれに同意したことから、22歳までの期間に設定してありました。

実際には息子は大学には進学はせずに専門学校に進学しましたが、支払い期間とし設定した22歳に達するまで養育費は支払わられました。

後々の子育ての安心のために

女性が子を引き取り育てていく過程には何があるかわかりません。なにかあったときのためにお金は必要です。決して、自分の贅沢のために使う訳ではありません。

協議離婚では、公正証書による離婚契約(公正証書離婚)が利用されることがあります。理由は、養育費、財産分与、慰謝料などの離婚給付について不履行時の事態に備えて、公正証書を作成し、その後、離婚をすることで安全性を高めることにあります。

公正証書は公文書としての信用力を備えていますので、離婚後にトラブルになったときの対応においても効力を発揮します。

上原 ゆかり
プリザーブドフラワーアレンジメント・ネイルSand.beige代表。アゴラ出版道場3期生

1972年生まれ。花王カスタマーマーケティング、ユニマットライフ営業を経て、2015年独立。自らの離婚経験から同じ悩みに苦しむ女性の手助けを志し、来年からの離婚カウンセラーの活動開始へ向けて勉強中。