アニメ海外展開、進み始めました。

コンテンツ東京2017@ビッグサイト。
アニメビジネス・パートナーズフォーラムのシンポを開催しました。
アニメやアニソンの海外展開について。
講談社伊藤洋平さん、KADOKAWA栁瀨一樹さん、ランティス高野宏之さん、CiP協議会亀山泰夫さんと登壇しました。

政府・知財計画2017はコンテンツ海外展開を一つの柱としています。
映像コンテンツはこの5年、500事業者が新規に海外展開に取り組むようになり、政府が支援した法人の海外売上は2,000億円近く増加しています。
特にアニメの海外売上は2012年~15 年の4年間で2.4倍に伸びました。

しかし、世界のコンテンツ市場規模は2014年で5,552億ドルで、日本コンテンツの売上げは141米ドルであり、海外市場全体の2.5%に留まっています。
まだまだ伸びしろがありますが、海外展開のリスク資金支援・異業種連携・権利処理の円滑化・人材育成・海賊版対策などの課題もあります。

マンガやアニメ、そしてアニソン(アニメソング)といった「強い」コンテンツをどう展望するか。
ポップ&テック特区CiPのような取組がどのような役に立てるのか。
を話し合いました。

講談社伊藤さん。「進撃の巨人」は単行本6600万部を売上げ(!)、アニメのシーズン1と2の間が4年開いたものの、商品化やタイアップで人気を続けてきた。ライセンスは5000商品に上るそうです。

進撃の巨人は、ぼくが審査に携わった2013年の日本商品化権大賞グローバル部門を受賞しました。
世界23か国に展開したことが評価されました。
伊藤さんは、これからは子ども世代にも人気を広げたいとか。
残酷な物語ですが、深く考えさせられる作品ですで、教材にするといいかもですね。

一方、マンガの海外市場はさほど広がらないのではないか、との見解をお持ちです。
紙は「高すぎる」から。
マンガを原作としてアニメ・映像が作られ、それが牽引してさまざまな商品が売られていく、という姿が正攻法でしょうかね。

ただ、伊藤さんは、海賊版の問題が依然として悩ましいとのこと。
正規版の販売や取締の強化など手は打たれてきていますが、十全ではない。
このあたりは改めて政府にも声を届け、がんばってもらいましょう。

栁瀨さんと高野さんは、アニソンメーカー連合による世界初の定額アニソン配信サービス「アニュータ」の展開を紹介しました。
ライブが好調だがパッケージは下降、配信が少々上向きの状況の音楽市場において、全2900億円の売上中アニソンは285億円と10%を占めるようになりました。

19歳以下の女性のお気に入り登録アーティスト、トップ10はみな男性声優なんですと(ぴあ総研)。
アニソンの海外人気も高く、今後は他社とコラボしつつ海外展開に力を入れるとのこと。

アニソンはアニメとヒモついているため、映像を思い浮かべやすい。
なので共感力が高いとのこと。
なるほど、共有しやすいわけだ。
ソーシャルメディア時代に合うコンテンツなのですね。
アニュータへの要望は、聴いている曲をツイートする「ナウプレ」機能が一番多かったそうです。
CiP亀山さんによれば、1.8兆円のアニメ産業はいま海外市場で伸びていて、世界で日本アニメ系のオタクイベントが活況を呈しているとのこと。
年間2000件のイベントがあり、サハリンでも2000人を集める催しが開催されているとか。

経産省の調査によると、日本コンテンツのファンは一部のマニアから幅広い層に広がっているものの、子ども層には海外作品の人気が高く、日本のアニメが市場を取り切れていない。
ドラゴンボール、セーラームーン、ポケモンのような強い作品がなくなったということでしょうか。

海外でのアニメはテレビやDVDではなく、ほぼネット配信で見られているということも明らかになりました。
子ども向けにはテレビの枠を押さえないといけませんね。

亀山さんは「世界オタク研究所」を秋に設立する構想を漏らしました。
世界各地で開催されるイベント主催者や大学・研究機関の研究者をネットワーク化して、その総本山をCiPに作る。
世界のユーザや市場の動向を研究することで、コンテンツ海外展開の役に立てたいです。

ただ、栁瀨さんによれば、アニメの海外展開が盛んになりながらも、製作委員会ではそのリスクを負うところが少なく、資金を提供しているのはアメリカや中国の資本とのこと。
海外展開権を持っていかれているのだそうです。
なかなかに深刻な問題が横たわります。

ようやく機運が高まり、異業種連携も進み始めたコンテンツ海外展開。
インバウンドへの波及効果も期待されます。

課題も山積ながら、前進しましょう。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年11月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。