アラバマ州上院議員補欠選挙に、日本人投資家が注目すべき理由

2017年11月29日 23:00

共和党の地盤として知られるアラバマ州で、上院議員補欠選挙が12月12日に行われます。

4期連続、約20年にわたり上院議員を務めた共和党のジェフ・セッションズ氏の司法長官就任に伴う補欠選挙は、米国内で注目こそされ、日本人投資家にはあまり馴染みがありませんよね。しかし、今回は留意しておくべきでしょう。

補欠選挙では、アラバマ州最高裁判所の元判事で共和党候補のロイ・ムーア氏の勝利が有力視されていました。しかし11月9日、ワシントン・ポスト紙の報道によってムーア候補の優勢が崩れます。約40年前に14歳だった女性への“性的嫌がらせ”疑惑が浮上しただけでなく、追加で4人が名乗り出る異常事態に陥ってしまったのです。民主党のダグ・ジョーンズ候補に対する約10ポイント近くのリードは消え、一時は逆転を許す場面も。直近で支持率は回復傾向にあるものの、予断を許さない戦況に変わりありません。

11月28日までの支持率動向。

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(作成:My Big Apple NY)

折しも米国では大物映画プロデューサーをはじめ、性的嫌がらせ問題が次々に発覚中。♯Metooキャンペーンがソーシャルネットワークで席捲中であることは、お伝えした通りで、ムーア候補には逆風が吹き付けます。

性的嫌がらせ問題は別として、思い出して頂きたいのが共和党が確保する上院議席数です。100議席中、共和党は52議席を有するため、税制改革法案の成立に際し造反議員が3人になれば否決となります。記憶に新しい例が、医療保険制度改革法(オバマケア)の撤廃・代替案をめぐる採決です。こちらでご紹介した3人が反対票を投じ、廃案を余儀なくされました。

しかし、共和党のムーア候補が敗北すれば51議席に減ります。従って造反議員が2人出てくれば、税制改革法案はゲームオーバーとなってしまいます。

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(作成:My Big Apple NY)

アラバマ州当局によれば、補欠選挙結果は12月22日、遅くとも26日に正式発表される予定。いずれにしても年末休会中にあたるため、当選した候補が正式に上院議員に就任するのは2018年1月となります。

この時までに上下院で一本化された税制改革法案が上院で可決していれば、何の問題もありません。しかし、仮に1)上院での採決が年明けにずれ込み、2)アラバマ州上院議員補欠選挙で民主党候補が当選し、3)共和党上院で造反者が2人となれば、税制改革法案が否決の憂き目に遭うというわけです。

共和党内ではこうした懸念が渦巻くためか、主流派を中心にムーア氏の出馬辞退を望む声が聞かれています。2016年の大統領選に出馬したルビオ上院議員、オバマケア代替案の採決に反対を表明し否決に追い込んだマケイン上院議員やコリンズ上院議員など少なくありません。

予備選時点からムーア氏に悉く批判的だったマコーネル上院院内総務も、出馬辞退を求める一人です。マコーネル氏は、セッションズ氏の地元人気と知名度を称賛した上で、議員復活への道に期待を表明しています。セッションズ氏の名前が候補者名簿に記載されていなくとも、制度上は有権者が投票用紙に希望する人物の名前を記入し投票できる“記入投票”候補として、出馬が可能であるためです(ちなみに、2010年のアラバマ州上院議員選挙ではオバマケア代替案に反対したマコウスキー氏が記入投票で半世紀ぶりに当選)。さらにマコーネル氏はムーア氏が上院議員に就任した場合に備え、公聴会で倫理調査を行う意思を表明するほど、驚かされますね。

ただ、共和党内部と政権がムーア氏への対応で一致していません。コーニン院内幹事はアラバマ州の選挙結果次第との立場を採ります。トランプ大統領は11月21日、ムーア氏の疑惑に「彼は完全に否定している」と発言、出馬辞退を求める共和党議員と距離を置く状況。税制改革法案の成立を控えた選挙戦ながら、引き続き政権並びに共和党内部が一枚岩で結束できない実態があらためて浮き彫りとなっています。

(カバー写真:Facebook


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年11月29日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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