「ブラック企業大賞」実行委員会に物申す!

荘司 雅彦

ブラック企業大賞サイトより:編集部

今年もブラック企業大賞のノミネート企業が発表されました。
実行委員会は「労働法やその他法令に抵触し、またはその可能性のあるグレーゾーンな条件での労働を意図的・恣意的に従業員に強いている企業」と、「パワハラなど暴力的強制を常套手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人」をブラック企業と定義しているそうです。

これを見て、ノミネートされているパナソニックと大成建設に勤務している小学生時代からの友人たちに事情を尋ねてみました。

その結果、少なくとも彼らの職場ではこのようなことはまったくないとの回答でした。
二人とも高校卒で就職しているので企業の幹部ではありません。

とりわけ大成建設の従業員は、普段から他の企業よりも有給休暇を取得しやすく、先般も京都旅行を楽しんできたとのことでした。

このような事情を斟酌すると、実行委員会は、全国規模の大企業の一部の事例だけを取り上げて「ブラック企業大賞」にノミネートしている可能性があります。

実行委員会の目的は「安心して働ける環境づくり」ということで、従業員の利益を最優先にしているようです。しかし、今の実行委員会の活動が真に従業員の利益に結びついているのでしょうか?

終身雇用から未だ脱していない日本企業では、自分が働いている会社がブラック企業大賞にノミネートされれば、従業員プライドはひどく傷つきます。

従業員には家族もいるので、彼ら彼女らの子どもたちが「お前の親はブラック企業で働いてるんだってな!」とからかわれてイジメの対象になるかもしれません。一部の事業所や職場内での事例を取り上げて、当該企業と従業員、はたまたその家族のプライドと社会的地位を貶めるのは、決して妥当なことではないでしょう。

もちろん、ノミネートされた企業の中には、全社的に従業員を苦しめる風土が蔓延している「真のブラック企業」があるのかもしれません。
検証していないので私にはわかりませんが…。

日本では、欧米諸国のように仕事と私生活を明確に区別できず、働いている企業に対する帰属意識が極めて強いのが実情です。自分の勤務する企業の社会的評価を貶められれば、極めて不快な思いをする従業員や家族たちの方が(そうでない人たちより)はるかに多いのではないでしょうか?

ノミネートされた企業を再度調査し、一部の特異事例だけを取り上げてノミネートしたことが判明したら、委員会は潔く当該企業に謝罪すべきだと考えます。

それすらできないのであれば、単なる目立ちたがり屋の偽善者と批判されてもやむを得ないのではないでしょうか?

説得の戦略 交渉心理学入門 (ディスカヴァー携書)
荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年11月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。