医療×ICTに頑張る佐賀県

医療分野でのICT活用に佐賀県は積極的に取り組んでいる。大風呂敷を広げず実直に取り組み、現場で実際に活用されている様子は素晴らしい。たとえばピカピカリンク。患者同意のもと病院・診療所などで診療情報を共有する仕組みである。今は13病院の情報が301の診療所・薬局・介護施設で閲覧できるが、診療所の記録を病院に送れるように機能追加が進んでいるそうだ。離島が多い佐賀県ならではのシステムである。

佐賀大学医学部では眼底写真から、緑内障だけでなく、様々な血管障害を発見する技術を開発している。人工知能(AI)が膨大な眼底写真を学習し、病気のリスクの高低を医師に示唆する。眼底の様子は病気によって変化するから、虹彩の模様とは異なり個人情報には該当しないので利用できたそうだ。

ドクターヘリに乗った医師がスマートグラスを着用して、高度救命救急センターと連絡しながら緊急処置を進めるシステムも実用に供されている。開発にはオプティム(OPTiM)が協力し、佐賀大学の間では包括的な連携協定が締結されバーチャルな「メディカル・イノベーション研究所」が設立されている。

佐賀県は根拠に基づく政策形成(EBPM)を推進し総務大臣から表彰されている。先行事例の一つが緊急搬送での課題解決で、救急車に積んだタブレットで搬送先候補の病院が対応可能かわかるようにしたそうだ。

佐賀県を訪問した際に着実な取り組みが進んでいる理由を聞いた。佐賀県庁の場合には、知事の下で最高情報統括監(CIO)が情報化を強力に推進したことで、ICTに対する職員の抵抗感が薄れたという。佐賀大学医学部付属病院の場合には、2002年に全国に先駆けて電子カルテシステムを全面導入したことで、診療科を超えて患者の診療にあたるようになったそうだ。

ICTを導入しても業務がそのままでは効果は限られる。佐賀県では県庁でも病院でも業務が変革し、それがICT利活用を前に進めていることが分かった。