鉄拳、パリに見参。
Japan Expoのステージに、アーティストとして、芸人として、そそり立つ。
でもこの会場はこんな出で立ちの人ばかりなので、「ぜんぜん目立たなくて困りましたよ~」。
パラパラマンガ作家として今や芸術家の誉れ高き鉄拳さん、ステージは4年ぶりだとか。
しかしそこはさすが、舞台に立つと、めちゃウケ。
「私、ジダンと、歳が同じです。」
ドッ。
何がそんなにおもろいねん、フランス人。
フランスに里帰りしている「こねこのチー」の応援もしてまいりました。
チーはアニメがフランスでも大人気。
会場に現れると人だかり。
うれしいな。
でも、もっと愛されてね。
アングレームに行った時も、チーの人気に驚いたことがありました。
「アングレーム、マンガ博物館」
てなこってJapanExpoです。
4日間で23万人の来場者。
第一回の2001年は3200人だったというから、ものすごい勢いです。
ぼくは4年ぶり。それまで毎年点検していた視点からすると、変わってないな、
というかんじ。
みんな陽気で何より。
前回行ったときの模様はこちらに。
Japan ExpoからTokyo Crazy Kawaii Parisへ
2010年に参加したときのぼくのメモから引っ張ってみます。
変わらないなぁ、と思うので。
–コスプレ、かぶりもの、ビジュアル系、キワモノ、ロリータ、ゴスロリ。ここに来ればヨーロッパ・オタクの勝ち組が胸を張る姿を見ることができます。
-フランスでマンガやアニメに親しむのは23歳までで、そのあと卒業するといいます。ティーンズの文化です。とにかく、若い。そして、カップルが多い。デートコースなのです。日本のオタク系イベントが基本、一人リュックで静かに伏し目がちなのとは空気が違います。Japan Expoは祭典です。
-日本のゲーム会社や出版社が本格的に進出してきました。コミケのように運営されてきたこのイベント、エンタテイメント企業ががっちりブースを出すようになり、ずいぶんビジネス色も帯びてきました。欧州市場をどう拡げるか、業界としてはアクセルの踏みどころです。
-ただし。フランス、イタリア、スペインというラテン系は恋愛系にコンテンツが集中しているけど、ドイツ語圏ではハードバイオレンス系が人気といいますから、欧州といっても一筋縄には行きません。まずは現地に入り込んで、マーケットを見極めませんと。
-マンガコーナーでは、フランス語訳のマンガに並び、日本語版のオリジナルもそのまんまたーくさん並んでます。同人誌、自費出版も多い。アニメDVDに群がるコスプレ、PSPやX Boxで最新ゲームを試している子どもたち、コミケやゲームショーでおなじみの光景が広がっています。
-アニメグッズ、コスプレ衣装、刀、ぬいぐるみ・人形、そしてライブ。コンテンツはプロモーションで、リアルで稼ぐ。ネグロポンテのビット・アトムで言えば、ビットで拡げてアトムで刈り取る。だけど、そのビット業界とアトム業界は分断されていて、トータルなビジネス戦略が描けていないようです。
-コスプレ率は3割ぐらいでしょうか。ナルトとワンピースが2トップで、鋼の錬金術師、BLEACH、エヴァも大勢います。女子高生の制服もかなり増えてます。それがアニメキャラのコスプレなのか、AKB48や実在の高校生をモデルにしているのか、制服の教養に欠けるぼくには判然としません。
-制服以外にも、ロリータ、ゴスロリといったポップも目立ちます。これらとコスプレとは出自も違い、元来コミュニティも違いますが、この屈託のない場ではこれらも「新しい和装」として一括りです。日本ポップファッションやコスプレでない参加者も、どこかいでたちには何らかの和魂をまとっています。
-日本のオタクは、降りるところから始まる。着ぐるみになって消す。欧州のオタクは、上昇志向で、見て見て!とやってくる。コスプレの自分を露出する。日本のコスプレーヤーは、自分の居場所たるコミュニティを求める。欧州コスプレは、オープンで、どんな場でもかまわない。
さて、7年前のメモとの差分は何でしょうか。
ビジネスマッチングへの踏み込みですかね。
日本企業のB2Bコーナー。
アソビシステム、ピクシブ、マーベラス、アニメイト。
それらに並び今回、吉本興業が初参加。欧州進出の足がかりになるか。
ANIME100というプロモーションがなされていました。
日本アニメ100周年。
ほかにもファイナルファンタジー30周年、初音ミク10周年、といったプロモも。
そうね、これだけの商品やキャラがあるんで、毎年何らかのアニバーサリーがあります。日本ポップにも厚みが出てまいりました。
ゲームが元気でした。
一時J-POPが期待をかけて売り込みに来ていましたが、あまりビジネスにつながらないとこのイベントからは撤退しました。
他方、今年は任天堂Switchはじめ改めてTVゲームの攻勢期に当たり、随分と踏み込み。
ジャンルの多様性という厚みも見られます。
くまモンが全国のリーダーとして振る舞っています。
かつてこの場所ではひこにゃんが汗をかいていました。
アウトバウンドをインバウンドにつなぐ。
アニメ聖地巡礼など各地の自治体が売り込む成果をそろそろ数字で示したい。
以前コミケと比較されていたこのイベントですが、オタク祭りではなくポップの祭典なので、比肩すべきはニコ超会議ですね。
だとすると、テック度が足りない。
ポップ度ではいい線来てるけど、ポップ&テックでは本場に一日の長があります。
孫さんのファンたちと思われる。
クールジャパンもう一つの本丸、フード。
たこ焼きに長蛇の列です。
そしてラーメン、カレー、ギョーザ丼、牛丼、うどん、おにぎり。
うん、ミラノ万博で打ち出した高級和食よりこっち路線です。
今回、あちこちにおにぎりを握って出す店が目につきました。
おにぎりへの注目度、高い。
パリの真ん中で「冷やし中華はじめました」を見かけてびっくり。
麺を冷やすのは日本独特の文化で(韓国の冷麺も日本の影響とか)、冷やし中華は中華という外来の料理をアレンジして創造するクールジャパン。
輸出は難しくインバウンド勝負と思っていたんですが、アウトバウンド勝負に出てます。
冷やし中華の脇にあるオテル・デュ・ルーブル。
文久遣欧使節団で福澤諭吉先生が泊まった宿。
当時、ご一行の周りには人だかりができたとか。
いま同じような格好してぼくが歩いても、誰も寄ってきません。
ちょんまげと刀がないからですかね、先生。
では股。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年12月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。