自衛隊が空母を持つ日

2017年12月25日 16:00

いずも型護衛艦(海自サイトより:編集部)

「空母」用戦闘機、導入検討 防衛省、「自衛目的」逸脱の恐れ

防衛省が将来的に海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦で運用することも視野に、短距離で離陸できるF35B戦闘機の導入を本格的に検討していることが、政府関係者への取材で分かった。既に導入を決めた空軍仕様のF35A計四十二機の一部をB型に変更する案、別に追加購入する案があり、来年後半に見直す「防衛計画の大綱」に盛り込むことも想定している。

護衛艦であってもF35B戦闘機を搭載すれば軍事的には「空母」と位置付けられ自衛のための必要最小限度を超えるため攻撃型空母を保有することは許されない、としてきた政府見解との整合性が問題となる。中国などアジア各国が強く反発することも予想される。

加速する中国の海洋進出への対処が目的で、当面は滑走路が短い南西諸島での運用を想定し、将来的にヘリ搭載型護衛艦を改修するか新造する。

この記事を読む限りでは空自か海自か統幕か、どこが要求するのは不明です。現状を考えるに、空自でF-35の追加分をF-35Bで発注し空自あるいは空海共同運用という英国方式で運良して、南西諸島や沖縄あたりに展開させて、いずも級「駆逐艦」で運用するんじゃないですかね。

ぼくは、いずも級は「ヘリ空母」であり、護衛艦=駆逐艦と強弁するのは常識を疑われるし、痛くもない腹を探られるし止めた方がいいと申しておりましたが、蒙昧なマニアだけではなく同業者からも批判されました。

いずも級のコンセプトは「守るフネから守られるフネへ」でした。当初の計画ではバウソナー装備はありませんでした。あれは天下り先確保のために本来不要なNEC製ソナーを搭載したわけです。結果1セット100億円。2セットで200億円の血税が天下り先確保のために浪費された訳です。そのうち下手人の官姓名を暴露しちゃろ。

またいずも級は当初ディーゼルや統合電気推進を採用し、最大速度を28ノット程度にするということも検討されました。それは燃料消費を格段に抑えることができ、燃料槽をミニマイズでき、運用コストを大幅に下げることができるからです。その場合燃料槽は現在の6割程度にできるでしょう。

仮に空母導入しても驚くような話ではありません。
2008年の横浜航空宇宙展で海自の海上自衛隊幕僚監部防衛部の装備体系課長、内嶋修1等海佐(当時)は講演で将来多目的空母でF-35Bのような固定翼機を運用する構想を披露しています。

文民統制の放棄!なぜ「空母」が生まれたか(東洋経済オンライン)

限りなく空母に近い護衛艦22DDH 海自のDDHは食玩である(ブログ)

そして将来のF-35Bの運用も想定されていたようです。飛行甲板はF-35やV-22の運用に耐えられるように耐熱処理が施され、エレベーターも当然そのサイズになっています。また最大2個飛行隊のF-35を搭載できるように設計されています。 これらは米軍との共同作戦を想定したものだよ、ということらしいです。本当かどうか知りませんが。

先に海自が音響艦にクルー制を導入することを朝雲が報じた件をご案内しましたが、これはいずも級を限定的にせよ空母的に運用するためのノウハウ蓄積かもしれません。

仮に護衛艦隊や潜水艦隊にクルー制を導入するならば膨大な人員増か、あるいはフネの削減が必用ですが海自はできないし、やりたくないでしょう。艦長のポストが激減するのには組織として耐えられないし、大幅増員は財務省が許さないし、募集も難しい。であれば空母運用のためと考えるのは決して荒唐無稽ではないかと思います。

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「仮に」現在のいずも級を軽空母として運用する場合、F-35Bを1個飛行隊+SWヘリを数機程度であれば十分可能でしょう。特に「浮かぶ前進航空基地」として陸上基地と併用するならば尚更です。

F-35Bは未改修のF-15の後継機として、いずも級を本格的な空母ではなく、例えばいずも級では弾薬や燃料の補給をしかしないとか限定的に空母の機能を持たせた「前進基地」的に運用するのであれば、たいした投資も必要ないでしょう。

ただ早期警戒ヘリは必用でしょう。現用入手可能なシステムはMCH-101にロールオン・ロールオフが可能な英海軍採用の「サーベランス」だけです。であれば海自のUH-Xは101が宜しいということになるでしょう。101も輸入に変更すればMHI提案の60Kベースの機体よりも安くなります。

仮にいずも級をベースに軽空母を作るならば、バウソナーと僚艦に給油する設備を撤去すれば艦内の容積は大幅に減るし、建造コストも下がります。その分のクルーも減らせます。スキージャンプ台をつけても、ソナーを撤去すればバランスも問題ないでしょう。

機関もディーゼルか統合電気推進にして最大速を28ノット程度にすれば燃料槽を劇的に小型化できますから、艦内容積が更に広くなるでしょう。また運用コスト、特に燃料のコストも劇的に安くなります。

またイージスアショア導入によってイージス艦の張り付きのMD対処任務が解除され、「ミサイル砲台」ではなく「駆逐艦」となるのであれば、事実上6隻のイージス艦を新たに調達したに等しくなり、「空母」の護衛艦に回せるでしょう。

あるいはいずも級をベースに、ウエルデッキを装備した米海軍のような「強襲揚陸艦」を建造するのも手でしょう。揚陸艦の建造は既定路線ですから。それだと「空母」ではなくて、「強襲揚陸艦」だよ、といつもの白々しい言い訳も使えることになります。空母のとしての機能はあるけど、揚陸艦。一番艦の名前は「いぶき」ですかね。

ぼくは以前からF-35を導入するのであればA型ではなくB型にすべきだし、軽空母導入もありだと主張してきました。空母導入は結構なのですが、その場合必要性と、運用するに足りる予算、人員の確保、更にはそれによって他の何の予算を削減するのか、キチンと構想を練ってからにして欲しいものです。

■本日の市ヶ谷の噂■
コマツの軽装甲機動車は排ガス規制に適応するために、エンジンを自社製のもの換装しようとしたが、ただでさえ高い調達単価が3千万円から5千万円に高騰し本年度予算では財務省が認めず、安くて性能がいい外国製エンジンと搭載を模索、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年12月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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