ほとんどの人が犯している間違ったメールの書き方

2018年01月17日 06:00

「確かに…。しかし…」という用法は、法律文書では頻繁に用いられます。

貸金の返還請求をされた被告が、「確かに100万円は受け取った。しかし、当該100万円は原告からの贈与だった」、「確かに100万円は受け取った。しかし〇年〇月〇日、被告は原告に全額返済した」というのが簡単な具体例です。

「抗弁」として用いることが多いですが、「一部否認」の場合もあります。

貸金返還請求の要件事実は、①金銭の授受と、②返還の約束の2つです。

「贈与だった」というのは①は認めるが②は否認するという一部否認です。

「返済した」というのは抗弁です。「①も②も認める。しかし返済したので支払い義務は消滅した」という構造です。

日常会話だと、「確かに…。しかし…」用法は、曖昧な使われ方がよく見受けられます。

「確かに君の言い分はわかるよ。しかし、相手の気持ちも考えてみたまえ」という表現はとても曖昧です。

この表現を、「君の言い分にも一理ある。しかし、相手の〇〇という言い分には賛成だ」に直すと、「君の言い分には概ね賛成だ。しかし〇〇については反対だ」という意味になり、「一部否認」のロジカルな表現になります。

もっとも、日常会話は角が立たずに曖昧にした方が好ましい場合が多いので、ロジカル表現にこだわりすぎない方が無難です。

厄介なのがEメールです。

紙の手紙を書くときは投函する前に見直すので手直しをする機会があります。

余談ながら、夜書いたラブレターは翌朝必ず見直した方がいいそうです。夜は感情が高ぶってしまうので、冷静な時間に見直すと赤面ものの表現を多用してしまうというのが理由です。

Eメールは、作成してすぐに送信してしまう人が多いようです(誤字、脱字くらいは確認するかもしれませんが)。

また、無意識的にか、「確かに…。しかし…」パターンを用いてしまう人が驚くほど多いのです。

「御社からのご提案はとても興味深いものでありました。…しかしながら、弊社といたしましては○○という理由で採用しかねます」というのが典型です。

個人メールでも、「あなたはとても博識で常日頃から尊敬しています。…しかし、個人的なお付き合いはお断りいたします」というメールです。

私が今まで見てきたネガティブメールは、ほぼ100%このパターンでした。そして、そのほとんどが読後不快感をもたらすものでした。

相手に不快感を与えないメールの鉄則は、最後をポジティブな言葉で締めくくることです。

安易に、「確かに…。しかし…」パターンにはまらないことが肝要です。

「弊社の〇〇の状況を斟酌すると、今回のご提案は見送らざるを得ません。…しかし、いただいたご提案は熟慮され、工夫を効かせた素晴らしいものと感銘を受けました。今後とも新たなご提案をいただければ幸いです」

「私は今は個人的なお付き合いをする気持ちはありません…しかし、あなたの博識ぶりにはいつも驚かされ尊敬の念を抱いております。今後ともよろしくご指導ください」

少々長くなりますが、例文をこのように変えるだけで、受け手の印象は180度変わります。難しいことではありません。

どれだけ美辞麗句を並べても、相手はメールの最後の表現しか記憶に留めないというだけのことです。意識しないと普段の癖は直せませんので、「美辞麗句で締めくくろう」とデスクの前に付箋に書いて貼っておけばいいでしょう。

もちろん、今後一切の関係を断ち切りたい相手に対しては、「キッパリ締めくくる」べきであることは言うまでもありません。善解の余地を残すと、逆恨みされかねませんから。

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荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年1月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。

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