【映画評】パディントン2

渡 まち子

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南米・ペルーのジャングルからやって来たクマのパディントンは、ロンドンのウィンザー・ガーデンでブラウン家の家族の一員として、幸せに暮している。もうすぐ大好きなルーシーおばさんの100歳の誕生日なのでプレゼントを探していたパディントンは、骨董品屋ですてきな飛び出す絵本を見つける。高価なその絵本を購入するために慣れないアルバイトを始めるが失敗ばかり。それでも頑張っていたある日、絵本が何者かによって盗まれ、パディントンはなんと容疑者として逮捕されてしまう。パディントンは自分の無実を証明するため、ブラウン家の人々と事件の真相を追うが…。

紳士すぎるクマのパディントンの活躍を描く人気作の続編「パディントン2」。今回は飛び出す絵本に隠された秘密を巡って落ち目の俳優が仕組んだ罠で無実の罪に!だが心配ご無用。礼儀正しく親切なパディントンの愛すべき“もふもふパワー”が見事に事件を解決していく。前回のヒットを受け、この続編は大幅にスケールアップしていて、大都会ロンドンを舞台に、カーチェイスや走行中の列車上での移動など、アクションすべてが躍動的でパワフルだ。もちろん前作同様、心がほっこりするエピソードも多数。中でも刑務所で最凶の囚人ナックルズ(名優ブレンダン・グリーソンが妙演)と友情を育む様は、微笑ましい。悪役なのにどこか憎めないヒュー・グラントの存在も効いているし、パディントンが飛び出す絵本に入り込む夢のシーンなど、カラフルでファンタジックな映像にも心が躍る。

赤い帽子と青いダッフルコートのパディントンはもちろん今回も最高にキュートだが、移民や多様性をテーマにした前作同様、この続編にも大切なメッセージが隠されている。それは相互理解だ。偏見を持たず寛容の心を持つことの難しさを痛感する昨今だからこそ、純粋なパディントンと、彼を家族として受け入れたブラウン一家との家族の絆、心優しい囚人仲間の友情が胸を打つ。苦さと甘さが溶け合うマーマレードように、豊潤な香りがするハッピーな作品だ。
【70点】
(原題「PADDINGTON 2」)
(英・仏/ポール・キング監督/ヒュー・グラント、ブレンダン・グリーソン、(声)ベン・ウィショー、他)
(ほっこり度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年1月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。