トランプ初の一般教書演説、語数でみる重要ポイントは移民改革と…

2018年02月01日 06:00

ダウが362.59ドルも急落した1月30日、トランプ大統領が初の一般教書演説を行いました。

世界経済フォーラム(ダボス会議)に続きテレプロンプターを横目で確認しながらの演説だったため、スタンディング・オベーションを求めるような手振り以外は品行方正だったトランプ氏。FOXのコメンテーターは終了後、「非常に良い出来栄えで、時には詩的ですらあった」と大絶賛。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙やCNBCからも「地に足の着いた(sober)」、「楽観的(optimistic)」と評価したのも頷けます。就任演説の暗黒ムードとは、正反対です。スティーブ・バノン氏が政権から去ったことも、大きいのでしょう。

ただし、リベラル寄りとされるCNNのコメンテーターは辛口そのもの。「毒入りキャンディーを届けたようなもの(He was selling sweet-tasting candy with poison in it)」、ワシントン・ポスト紙は“トランプの結束と分裂を呼ぶ一般教書演説、注釈(Trump’s simultaneously unifying and dividing State of the Union address, annotated)”をヘッドラインに採用しました。

下院議場でトランプ大統領を紹介したのは、引退が取り沙汰されるライアン下院議長。ここで、ちょっとしたハプニングが発生しました。「I have the high privilege and the distinct honor of preventing, uh, presenting to you the President of the United States..」と言い間違えてしまったのです。Preventingは防ぐ、Presentingは紹介するという意味で、大違いですよね。一般教書演説の招待状にスペルミスが見つかり、またトランプ氏自身が大統領就任前にunpresidentedとツイートした過去もあり、つられてしまったのでしょうか?いずれにしても、ライアン議長自身は否定してしますが、2020年の大統領選出馬となればメディアが使い回すこと必至でしょう。

さて、本題に戻ります。

一般教書演説前はインフラ投資が柱になると報道されていましたが、語数だけで判断した場合、今年最も注力する項目は“移民改革”となる見通しです。なお、今回の一般教書演説での語数はおよそ5,150語でした。

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(作成:ホワイトハウスの演説資料を基にMy Big Apple NY)

従来、一般教書演説は詳細を説明する場ではないものの、“移民改革”では“4つの柱”を提示しています。

1)ドリーマー180万人の米国市民権取得の枠組みを導入
2)メキシコ国境の壁建設など警備強化
3)永住権をめぐる抽選制度の廃止、並びに能力重視(merit-based)の移民政策の採用
4)永住権保持者による近親者以外の移民支援の撤廃

それもそのはずで、2月8日には暫定予算が期限切れを迎えますよね?予算案は上院で60票を確保する必要があり、共和党の51議席では到底足りません。民主党の協力は必要不可欠であり、同党懸案のドリーマー問題を移民改革の第一に掲げ妥結を手繰り寄せる作戦なのでしょう。選挙公約遵守や能力重視の移民政策の採用もできるのであれば、政権が譲歩した印象もぬぐえます。

予算に関連して、“テロ問題・軍備増強”など国防の登場回数が多かった点も重要です。強制削減撤廃を目指すにも民主党の支援がカギを握りますが、果たしてどうなるでしょうか。

国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し1月版やカナダ銀行(BOC)の金融政策決定会合後の声明文では“北米自由貿易協定(NAFTA)”がリスク要因に名指しされたものの、ここでは登場せず。議会演説となる前回は発言していたので、状況の変化を感じさせます。演説で自身の就任後に製造業20万人を含む240万人も雇用が創出されたとアピールしたため、NAFTAを批判すれば整合性が取れないと判断したのかもしれません。

インフラ投資は事前の報道がファンファーレを鳴らした割に、1.5兆ドル規模と示す程度にとどまりました。連邦政府より、州政府の管轄であり、官民の協力が必須である点が考慮されたのでしょうか。

前回通り日本の言及はゼロ。代わりに雇用増加の言及でアップルと並び、トヨタとマツダが登場しました。代わりに、利益を損ないうる「ライバル」と中国とロシアが入ってきました。中間選挙前に2017年の中国対米黒字が過去最高の勢いを見せ、ロシアゲートで揺れる事情もあり、政権として無視できなかったのでしょう。

国別で最も登場回数が多かったのは、北朝鮮でした。国防費の強制削減廃止と合わせ気掛かりな内容でもあります。

さて、ここからは雑感を。

トランプ氏は一般教書演説で、就任後に黒人の失業率が過去最低を更新したと自画自賛しました。同発言を受け、トランプ大統領が放ったJay-Zへのツイッター砲を思い出したのは筆者だけではないでしょう。。

トランプ氏のネクタイが赤ではなく青だったことで一部の保守派は批判的だったものの、結束を演出したとの感想も聞かれます。ではファーストレディへのファッション評価はというと・・。民主党を中心に、「当てつけ」と受け止めたようです。メラニア夫人が選んだ仏ブランド、クリスチャン・ディオールのスーツの色が問題で、クリームがかった白で統一していたのですよ。#Metooキャンペーンが全米を席捲するなか、ゴールデン・グローブ賞に倣い民主党の女性議員は黒の装いで出席していたので、一部で反感を買ってしまいました。ちなみに民主党女性議員は2017年、女性の権利を主張すべく婦人参政権のテーマカラーの白をまとって反トランプを演出していたんですけどね。

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(出所:C-Span vis New York Post

共和党議員のファッションにも、統一性があったことはご存知でしょうか?そう、星条旗カラーの青、赤、白の3色で合わせていたのです。米国の結束を象徴すると共に、愛国心を強調したといいます。

最後に、黒人議員の姿におやっと思ったあなたはアフリカ通。ガーナの男性が着用するアフリカ独立の象徴とも言うべきケンテを身に着けていましたよね。

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(出所:C-Span)

アフリカ諸国を“便所”と切り捨てた(?)トランプ氏へ非難であることは、言うまでもありません。

(カバー写真:The White House


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年1月31日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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