名護市長選 陰の敗者は沖縄の新聞

2018年02月05日 17:00

沖縄・名護市長選から一夜明けて、さまざまな記事や論評、情報が明らかになっているが、どうしても引っかかる新聞記事があった。地元紙、沖縄タイムスの記者コラムで「名護市長選の陰の勝者は、安倍政権だった。そして陰の敗者は、この国の民主主義だった」などと決めつけている。

【記者の視点】名護市長選 敗者は日本の民主主義 | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス

民主主義を敗者と決めつけている根拠は、現職の稲嶺氏が当選した際の公約が基地反対でそれを履行してきたからであり、名護市民への世論調査でも3分の2が反対してきたという経緯があるからのようだ。

しかし、基地問題は名護市政が向き合う重要で「派手」な争点のひとつであっても、景気や生活インフラ整備、高齢化対策など、ほかにも市民の生活に密着した「地味」な課題もある。

記事を読むと、この記者には、補助金を巡る安倍政権による振興策が、ある種の「分断」のように映っているだが、それが政治のリアルであったにしても、次のような論評は言いがかりでしかない。

安倍政権は、既成事実を積み重ねて市民の正当な要求を葬った。民主主義の理想から最も遠い「あきらめ」というキーワードを市民の間に拡散させた。

安倍政権は名護の選挙の構図自体を4年かけて変え、市民から選択の余地を奪った。大多数の国民がそれを黙認してきた。

論評記事なので「フェイクニュース」と言うまい。ただ、百歩譲って「あきらめ」というキーワードを拡散させたというのがレトリックであったとしてもそれ相応に裏付けるファクトがあってのことなのだろうか?

むしろ、地元テレビ局の出口調査で、20〜50代までが渡具知氏支持、60代以上が稲嶺氏支持にクッキリとわかれたことからも明らかになっている。


若年層を中心に現職から離反が進んだこと自体を「あきらめ」というのだろうか。そもそも、あきらめたのであれば選挙にはいかないだろう。逆に投票率は、期日前が44%と前回より10ポイント以上アップし、最終投票率も僅かだが前回を上回った。

この記事はすでにネット上で「炎上」しつつあり、前述の出口調査で若年層の主体的な選択を踏まえて記者に対して非常に厳しい意見が並んでいる。

名護市民は悩んだ末に舵を託した。その決断に怨嗟の声を上げたり、呪詛の言葉を投げつけるとは。沖縄の新聞が如何に名護市民をバカにしているか、よく分かる記事。結局、自分達の書きたい記事に人を利用することしかこいつらは頭にないのだ。

このツイートが示すように、名護の市民は悩んだ末に、民主主義の正当な手続きに基づいて一票を託し、新しい選択をした。それとも記者は非合法なものだったとでもいうのだろうか。

記事を書いた阿部岳記者は以前、沖縄に講演に来た百田尚樹氏とバトルになったことで注目されたそうだが、テレビのインタビューに対し、「中間中立で報道しているという気はない」「沖縄の立場に偏っている」などと公然と語っていたようだ。

朝日放送「キャスト」より

偏向しようがそれは言論の自由なので構わない。ただ、沖縄では長く、沖縄タイムス、琉球新報のライバル同士が共に似たような論調で展開し、沖縄県民の世論を形成してきた。近年、保守現実路線の八重山日報が「第3紙」として本島に進出したものの、まだ部数は少ない。沖縄の言論は、両紙の寡占市場ともいえる状態が続いているが、しかし、今回の出口調査で新聞を定期購読しない or しなくなりつつある世代が、おそらくネットも使いながら自分たちで情報を得て投票判断を決めた可能性があることで、風向きも少し変わりつつあるようだ。

こういう意見もツイッターでいただいた。

「新聞記者だって何をどう書いてもいいんだ」という時代になったということでは?我々世代はインターネットという巨大ゴミ置き場から何が有益で利用可能かを見つけ出し選別する力を磨いてきました。私たちにとっては今や新聞記事も「ゴミの一つ」でしかない、ということかと思います

そういう意味では、正当に民主主義的な手続きを経た名護市長選の“陰の敗者”は沖縄の新聞かもしれない。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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