山手線は日本一の環状路線!激混みならではの風情がある?

画像は路線図をベースに田代さんが作成したもの


路線名称としての「山手線」は、港区の品川駅を起点に、渋谷駅、新宿駅、池袋駅を経由して北区の田端駅を結ぶ全長20.6kmの鉄道路線の総称になる。東京の都心部で環状運転を行い、多くの駅で、都心から各方面へと伸びる私鉄各社の路線とも接続している。

1周の長さは34.5km、1周の所要時間は内回り、外回りともおおむね約1時間程度かかる。日本一の乗客数をほこる路線であり、とくに新宿駅は世界一の乗降者数を誇る駅でもある。駅は全部で「29駅」、1872年に開業し、1971年に29番目の西日暮里駅が完成した。

今回は、田代幾美さんに、山手線に関する興味深いエピソードを中心に伺った。なお、田代さんは、会社員であり、ブロガーとしても活動をしている。

山手線外回り半周で発見したこと

田代さんは、仕事などの活動範囲が山手線の南半分(東京~品川~渋谷~新宿)が多かったそうだ。北半分(新宿~池袋~上野~東京)のルートを利用する機会は少なかった。

「ある日、池袋から浜松町に移動しようと、ホームにあるお馴染みの路線図を見たところ、外回り(つまり、北半分コース)を利用するほうが数分早いことを知り乗車しました。ほとんど乗り降りしたことがない駅を半周してゆくうちに、どの駅が何区にあるのかを調べてみたくなったのです。」(田代さん)

「全部で29駅。最大1区5駅(豊島区)、最小1区1駅(北区)や、該当のない区。駅名と区名が異なる(目黒駅→品川区、品川駅→港区)など、興味深い事実が明らかになりました。左側通行の国家(アジアの日本やシンガポール、欧州のイギリスやアイルランド)などは、外回りは時計回り、内回りは半時計周りとされています。」(同)

興味のある方は、本記事の画像をご覧いただきたい。これは路線図をベースに、田代さんが作成したものになる。首都環状線にも関わらず中央区などが含まれていない。

「山手線には利点があります。とにかくひっきりなしにくること。上空からみたら、緑のドーナツ(笑)のごとく、車体が連なっているんだろうな(一度見てみたい)と思います。各駅にそれぞれ情緒や区の特徴があるのも興味深いです。今回、山手線を調べるなかでいろいろな気づきがありました。」(田代さん)

「次に、欠点です。1駅1駅止まるので、なにしろ時間がかかります。朝夕のラッシュアワーは『時間調整』で停車することもしばしば。とはいえ、待避所が無く急行を走らせることは無理らしいです。そもそも、速い電車に乗りたければ、並走している湘南新宿ラインや京浜東北線を選ぶ、という方法もありますから不要なのでしょう。」(同)

田代さんによれば、山手線は「永遠の各駅停車」なのだそうだ。今後も、急行の必要性は無いし、可能性は低いだろう。「永遠の各駅停車」という表現がわかりやすい。

山手線たらしめる理由

山手線は、よく数字のトリックに使われることがある。数字はありのままの無機質な客観的データに見えるので、人の錯誤を誘いやすいのである。参考までに、山手線内側の面積(約64km2)は、次の面積とほぼ同じである。
・パリのペリフェリック(環状都市高速道路)の内側
・ニューヨークのマンハッタン島
・東京ドームの約1360個分

また、バブル時代、山の手線内の土地の価格で、アメリカ全土が買えると言われたことがあった。80年代後半の土地価格でアメリカ全土が買えるという算出結果が存在した。山手線にはこのようなトピックが多いが、山手線たらしめる理由があるのだろうか。

「江戸時代に隅田川から神田川を経由して作られた外堀の水が、江戸城に向かっていました。これは意図的につくられたもので結界があったという説があります。事実はわかりませんが、山手線は全国各地から移動してくる鉄道のターミナルポイントの役割を担っています。山手線は人々が都心へ向かう結界と考えることもできます。」(田代さん)

ラッシュ時の混雑でイライラしたら、このような気分転換が必要になる。歴史に思いをはせることでロマンを感じないだろうか。さて、筆者も1月に新しい本を上梓したので、関心のある方は手にとっていただきたい。ラッシュ時の車内のお供で、気分転換になるかも知れない。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)

尾藤克之
コラムニスト