書評:落合陽一氏『日本再興戦略』

井上 貴至

企業経営者・メディアアーティスト・筑波大学学長補佐でもあり、現代の魔法使いとも呼ばれる落合陽一氏の新刊『日本再興戦略』を拝読しました。

冒頭3行目から、惹きつけます。

日本が自信を取り戻すために大事なことは、「過去において日本は根本的に何がすごかったのか、何がすごくなかったのか」について我々の常識を更新しながら考えることです。(P11)

まさに、そのとおり。

その上で、この本のありがたいのは、言葉の定義が緻密なこと。
章ごとに、キーワードを詳細に説明します。

「欧米」とはユートピアであり、日本人の心の中にしかないものです。(P30)

という考えも、とても共感します。

「欧米」でなく、米国、英国、ドイツ、フランスというふうに国の単位で語るべきです。また、いつの時代の、どの国か、ということも重要です。そうするだけで、議論がとてもしやすくなります。(P31)

アメリカ人が、アジア人とかユーラシア人という捉え方で議論すれば、やっぱり変で雑ですよね。

5Gの通信自動運転ブロックチェーン機械化・・・が「日本再興の鍵」だというのも、また、それらが進むと「分散型」になるというのも、最近よく言われることですが、日本の歴史を鋭く分析しているので説得力もあります。

一方、もちろん全てに賛成しているわけではありません。

1)例えば、機械化自衛軍は、制御ができないのではないか。この発想自体が中央集権型で、分散型になるという将来予測とも矛盾するのではないか。

2)また、人口が減少しても経済成長できるという考えは甘くないか。5Gや自動運転などが実現できたとしても、人口が減少した地域では、水道や電気などのインフラを負担することが難しいのではないか。また、若者の減少は地域のチャレンジの減少に繋がるのではないか。

と、現場から、疑問がわくこともあります。

いずれにせよ、落合陽一氏の『日本再興戦略』は、平易な言葉で深い内容を書いていますので、皆さんも読んでみて、自分の頭を耕してみたらいかがでしょうか。

<井上貴至 プロフィール>

<井上貴至の働き方・公私一致>
東京大学校友会ニュース「社会課題に挑戦する卒業生たち
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<井上貴至の提言>
間抜けな行政に、旬の秋刀魚を!


編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2018年2月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。