NewsPicksが持ち上げた謎の投資会社をFACTAが痛撃

2018年02月20日 13:00

昨年11月、創業者と現経営陣が経営権を巡って争ったJPホールディングス(JPHD)のお家騒動が今年に入り、さらに複雑怪奇な様相をみせている。筆頭株主でもある創業者と現経営陣側が対立した臨時株主総会の折は、アゴラでも取り上げたが、創業者らのセクハラ醜聞も飛び出して週刊誌沙汰となった末に現経営陣が辛うじて委任状争奪戦を制した。無料で記事が読める大手メディアではあまり取り上げられていないのだが、事態がさらなるカオスになり始めたのは、年が明けてからのことだ。

“出来立て”の投資会社がいきなり筆頭株主に

それまで筆頭株主だった創業者が、投資会社マザーケアジャパン(本社・東京都渋谷区)に持ち株の大半を譲渡していたことが明らかになった。一見すると、創業者が経営復帰をあきらめて投資ファンドに譲ったようにも思えるが、奇怪なのは、この新たな筆頭株主となった同社と、同社に資金提供したグループの投資会社未来キャピタルは、ともに昨年12月に設立されたばかり。いずれも代表を務める坂井徹氏の経歴について謎も多く、JPHD側は相当警戒していたはずだ。

常識的に考えても、お家騒動中の一部上場企業の筆頭株主に産声をあげたばかりのファンドが突然躍り出たわけだから、波紋を呼ぶのは必然だろう。実際、証券業界や経済メディア関係者の間では、未来キャピタルや坂井氏の正体、JPHD株買収の意図について様々な憶測が取りざたされていたようだ。

そうした中で買収から1週間もたたない1月23日、NewsPicksが坂井氏への独占スクープインタビューを掲載し、関係者らの耳目を集めた。

(NewsPicks)お家騒動の保育園。JPホールディングスを買った理由を明かそう

筆者がこの記事の存在を知ったのは少しあとのことだったが(有料会員なのに…苦笑)、坂井氏は、大量保有報告書の提出前にJPHD側に挨拶に行くなど敵対的買収でないことを強調。マザーケアジャパンはJPHD株買収の目的会社であることや、高止まりしている社会の保育ニーズにビジネスチャンスを見出していることなどを述べている。

NewsPicksがツッコミ損ねた重要ポイント

インタビューをしたのは、週刊ダイヤモンドから鳴り物入りでNewsPicksに2年前に移籍した池田光史記者。ダイヤモンド時代から金融業界を担当していたので、これまでの人脈から売り込みがあったのかもしれない。各社が謎解きをしているなかで間隙を突いての見事な先駆けではあるが、坂井氏のことをサブタイトルで「日本最大の保育園を買った男」などと題名からして持ち上げている割には、JPHD側が特に関心を持っているであろう部分には踏み込んでいない。

一つには、坂井氏の素性が判然としないこと。取材はしているのかもしれないが、質問すら掲載されておらず、スクープと引き換えにそのあたりは踏み込まない約束があったのかどうか。

もう一つは、JPHD株の取得に要した約80億円の出所だ。大量保有報告書には資金の出所が記載されるが、マザーケアジャパンは、未来キャピタルからの資金提供だったとしている。しかし、先述したように、未来キャピタルは、マザーケアジャパンと12月に1日違いで設立された“ポッと出”の会社であり、坂井氏が80億円ものお金をどこから調達したのか疑問が残る。

未来キャピタルでのJPHD株を取得した場合には、調達先も報告することになるが、マザーケアジャパンをいわば“ダミー会社”として介することで、本来の資金の出所を報告する必要はない。そうしたスキームにしているあたり、「後ろめたい事情があるのか」と思う人もいるだろう。

NewsPicksはこれまでも週刊文春の新谷学編集長やDMMの亀山敬司会長など、大物著名人の顔出しNGの独占インタビューを載せてはいるが、今回の坂井氏に関して、そもそも素性が一般に知られていない人物の顔出しNGのインタビューを掲載したあたりにも何か特別な背景があったのだろうか。

顔出しNG、不可解なインタビュー場所

もちろん、坂井氏が私財として80億のお金を持っていた可能性もゼロではないが、未来キャピタル、マザーケアジャパンはともに資本金500万円でしかない。さらに「一般論」としてだが、たとえば反社会的勢力からの出資金を元手に上記のスキームでロンダリング、上場企業の筆頭株主になってしまう危険性のことを考えると、池田記者がそのあたりのツッコミをインタビュー時にしていたのか、一読者としては不可解な印象が残った。

まあ、反社会的勢力との関係性はさすがにないと思うが、坂井氏と創業者とのつながりがあったのかはこの問題に関心を持つ読者なら誰でも連想するだろう。この記事で坂井氏は、創業者とは契約時に一度会っただけであると強調している。

NewsPicksより

なお、マニアックな余談だが、港区民としてはインタビュー場所がどこかで見た光景であることも気になった。坂井氏の背中を見せた写真の窓越しに映る、大手ビジネスホテルチェーンの建物の形状などから、品川駅の高輪口にあるチェーン店だとわかる。そして、記事の写真の撮影場所の標高やアングルからして、JRの線路をまたいだ港南口側にあるオフィスビルの一室とみられる。

となると不思議なのは、未来キャピタルマザーケアジャパンともに登記上の本店所在地は渋谷区本町にあり、恵比寿にあるNewsPicks編集部のいずれでもないことだ。このインタビューのために会議室を借りたのかもしれないが、わざわざ品川に取材場所を選んだ事情があったのだろうか。

なお、上記本店所在地をGoogleマップで調べてみると、大手有名不動産のオフィスビルがある。しかし、両社のウェブサイトには、ビル名はおろか、階数も記載がない。老婆心ながら、これでは、オフィスへの訪問者や郵便物がたどり着けるのかと心配してしまう。

FACTA参戦で風雲急を告げる展開か

そして、この記事が出た頃、JPHDに対して、SSBFコンサルティングサービスと、JCテクノロジーという2社から突然、臨時株主総会を請求する動きがあった。両社合わせて3%ほどの株を保有しており、JPHDの萩田和宏社長の解任を要求した(参照:1月15日付・日経電子版)。臨時株主総会は3月下旬に開かれる見通しだ。

しかし、時期的に筆頭株主が入れ替わったばかり。その正体もよくわからない状態で、創業者や未来キャピタルと関連も憶測しそうになる中で、あのFACTAがやってくれた。きのう20日発売号で未来キャピタルを調べた成果、坂井氏への突撃取材の模様も掲載している。会員限定ながらオンライン版でもアップされている。読者の疑問に答える、ズバリのタイトルだ。

(FACTA ONLINE)JPホールディングスに奇っ怪な「大株主」(※本文は会員限定)

詳しくはFACTA本誌なりオンラインなりをご覧いただきたいが、坂井氏は自らの経歴などについては頑なに口を閉ざしている。また、臨時株主総会招集を要求している2社のうちの1社との強い関連性を伺える傍証(これが興味深い)についても編集部が突き止め、ほかにも数々のきな臭い話が述べられている。

さすがオリンパスの粉飾決算の世界的特ダネで名を挙げたFACTA。その調査能力の一端を拝ませてもらうとともに、NewsPicksにとっては先駆けして持ち上げた謎の投資会社が、他媒体からの追及を受けて堕ちる展開になるのか、今後のJPHDの騒動の展開によっては、独占インタビューの取材した経緯や記事の中身についても微妙に問われたりしなければいいが……と高みの見物を決め込んでいるこの頃でした。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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